スイカの栽培・育て方のポイント

 夏の風物詩、季節を代表する果実といえばスイカでしょう。うだるような暑さの中、よく冷えたスイカをかじる瞬間はまさに至福のひと時。口の中にあふれる水分たっぷりの甘い果汁と、独得の食感は他に代えられません。暑さにバテ気味の体をやさしく癒してくれます。
 それにスイカはただおいしいだけではありません。体にもとても良い果実です。赤い果実の中にはリコピンやカリウム、リンなどのミネラルが豊富に含まれており、夏バテ防止にも効果的なのです。また、水分の補給にもぴったりです。
 そんなスイカですが、実は家庭菜園でも簡単に育てることができるというのをご存知ですか?
 あの大きな果実を見ると、一見難しそうですが、コツさえつかめば初心者でも決して不可能ではありません。また、大きな品種でなければプランターなどでも栽培は可能です。
 そんなスイカについて、これから育ててみたいという方のためにその栽培方法やコツ、気をつけるべきこと、害虫対策など役立つ情報を詳しくご紹介します。

1章:スイカとは
2章:スイカの栽培・収穫スケジュール
3章:栽培しやすいスイカの種類
4章:スイカの栽培方法
5章:収穫前にスイカの実が割れる原因
6章:カラスなどの害鳥対策
7章:スイカ栽培で必要な害虫対策
8章: プランターでの育て方
まとめ

1章:スイカとは

実は果物ではなく果実的野菜

 紀元前5000年にはすでに栽培されていたというスイカ。一般的には果物というイメージがありますが、正確には果物ではなく、農林水産省による分類では果実的野菜というものになるのだそうです。
 野菜と果物の違いは、一般的に多年生の樹に実がなり何年にもわたって収穫できるのが果物、一年生か二年生の植物(草)で、収穫が終わると畑を片付けて次のものを栽培するのが野菜とされています。そうなると、樹にならず、田畑で栽培される上、リンゴや梨のように数年にわたって収穫できないスイカは野菜ということになります。
 しかし実際にはスイカは野菜としてではなく果物、フルーツとして一般に認識されており、そのように扱われ広く食されています。そのため本来は野菜ですが用途としては果物、つまり果実的野菜と分類されているわけです。同じようなものとしてはメロンやイチゴなどがあります。
 スイカは漢字で西瓜と書き、日本の伝統的な果物(正しくは果実的野菜)のようなイメージがありますが、原産はアフリカ。西から渡来した瓜であることから西瓜という漢字が当てられたようです。どのようないきさつで渡来したのかははっきりしないようですが、1600年代の江戸時代にはすでに日本に伝わっていたようです。そのころには既に庶民に食されていたという記録もあるといいます。
 そんなスイカですが、その実には水分や糖質が多く含まれています。またビタミンA、B1、B2、Cなども豊富に含まれており、実の赤は、リコピンとカロテンによるもの。そしてスイカの果汁は薬用として利尿に特別の効果があることも知られています。また、スイカの皮がコレステロールを減少させたり、血管を拡張させたりする薬の材料としても使用されているそうです。おいしいだけでなくとても役に立つ作物なのですね。
 そしてスイカは家庭菜園で栽培するのもそれほど難しくありません。種からでなく苗から育てればさらに栽培しやすいといえるでしょう。
 その栽培のポイントは気温と水はけです。日当たりが良く、水はけの良い畑で、なおかつ風通しが良い場所であれば、小さなスペースでも栽培は可能です。具体的にどのような点に気をつけて栽培すれば良いのかは次の章から順にご紹介します。

2章:スイカの栽培・収穫スケジュール

気温が十分高くなった梅雨前が植えつけシーズン

 まずは収穫スケジュールの確認です。寒冷地や温暖地ではない本州でスイカを種から育てる場合、種まきは、3~4月ごろに行います。
 苗木から育てる場合は5~6月ごろが植えつけの適期です。種から育てることも可能ですが、どちらかというと苗から育てるのが一般的です。家庭菜園なら、より育てやすい接ぎ木苗などがオススメです。
 5~6月ごろに苗を植え、収穫は7月から8月ごろ。大玉系は開花から45~50日、小玉系なら開花から35~40日を目安に収穫することが可能です。

3章:栽培しやすいスイカの種類

初心者でも育てやすいのは小玉スイカ

 スイカは大きく分けて大玉種、小玉種、そして長楕円形のラグビーボール型などがあります。この中で比較的育てやすいとされているのが小玉種です。初心者はいきなり欲張って大玉種のスイカに挑戦するよりも、育てやすいとされる小玉種から始めるのがオススメです。
 この小玉種のスイカにも様々な品種がありますが、「うり防」、「紅しずく」、「紅こだま」や「ひとりじめシリーズ」などが比較的育てやすいとされています。
 また育てやすさでいえば、種からではなく苗から育てる方が比較的簡単で失敗が少ないでしょう。苗も、実生苗ではなく、接ぎ木苗の方が初心者には向いています。
 接ぎ木苗は、病気や連作に強い根を持つ台木にスイカの穂木を接ぐことにより病気に強く、さらにおいしい実ができるように作られた苗です。種から育てた苗に比べて値段は少し高めですが最初はこの接ぎ木苗で栽培する方が失敗は少ないでしょう。
 苗を選ぶ際は、極力健康な苗を選ぶようにしてください。健康なスイカの苗とは、まず節と節の間が詰まっていて本葉が3から4枚あり、葉の色も濃くツヤがあるものです。さらに、しっかり根を張っていて株元がぐらついていないこと。そしてポットの底穴から元気な根がのぞいており、なおかつその根が白いもの(根が穴から飛び出してから時間がたつと茶色くなる)を選ぶと良いとされています。
 そして、いうまでもないですが虫がついていないというのも重要です。葉の裏なども確認してアブラムシやハダニがついていないかも忘れずにチェックしましょう。

4章:スイカの栽培方法

日当たりが良く水はけのよい畑で栽培する

 スイカは家庭菜園の小さな畑でも比較的簡単に栽培することが可能です。ポイントは防寒対策です。スイカは暖かな地域が原産地のため、栽培には高い気温が大切です。比較的日当たりが良く、風通しが良い場所で栽培するようにしてください。

土づくり

スイカは水はけの良い土を好みます。そのための土作りとして、まずは堆肥を1㎡あたり2kgほど入れてよく耕しておきましょう。そして一週間ほど寝かし、植え付け2週間前になったら苦土石灰を1㎡あたり100gほど混ぜておきます。そして高さ15~20cmほどの上面が平らな畝を立てます。そこに穴を掘り、元肥として化成肥料を1㎡あたり50~100g混ぜ込んでおきましょう。肥料はスイカやメロン専用のものを使うのもオススメです。

苗の植え付け

最低地温が15℃以上になった頃に苗を植えつけます。植え付け前日には苗のポットに十分水やりをしておいてください。マルチを張った畝に、植え穴を掘ったらその中に水を入れます。その水が引いたら根鉢を崩さないよう浅めに定植してください。株どうしの間隔を100~200cmほど開けます。たっぷり水をやったら保温のためホットキャップをします。気温が上がり、霜の心配がなくなったらマルチとホットキャップを外します。

水やり

そのみずみずしい実のイメージから、スイカはたくさん水をやらなくてはいけないように思えますが実際は逆です。もともとアフリカの乾燥した地域が原産地なので、乾燥気味の環境を好むのです。そのため、あまり水をやりすぎると生育が悪くなり、病気にかかりやすくなってしまいます。また、実の味も薄く水っぽくなってしまうのです。栽培時期が梅雨から夏にかけてなので、季節的にも雨が降ります。そのため基本的に水やりは不要です。日照りが続き、土が完全に乾いて葉が明らかにしおれているような場合にのみ水をやってください。その際は土に水がしっかり浸みこむまでたっぷりと水やりをしてださい。ただし、暑い日の日中は避けてください。根が煮えて弱ってしまいます。

整枝・摘芯

親づるが伸びてきて、本葉が5~6枚になったら親づるの先端を摘芯し子づるを3~4本残します。成長に合わせてワラを敷き、つるどうしが絡みあわないように配置します。摘芯後に脇芽の子づるが伸びてきたら、生育の良い子づるを3~4本ほど残して、他の子づるは摘み取りましょう。

人工授粉

基本的に授粉は必要ありませんが、確実に着果させるためには人工授粉をすると良いでしょう。また防虫ネットなどを使っている場合も人工授粉してください。雌花が開花したら雄花の花粉を早朝のうちに雌花の柱頭につけると実なりが良くなります。雄花と雌花の見分け方は、がくの下の方が膨らんでいるのが雌花で、膨らみがないのが雄花です。着果し、実がたまご大になったら、やや大きめの実を一枝あたり1~2果ほど残し、残りを摘果します。それぞれの子づるに2個ずつ、1株で6~8個の収穫が期待できます。

追肥

追肥は子づるが50cmくらいに伸びた頃と、果実がたまご大になった頃の2回行います。化成肥料をつる先や、畝の片側に施肥して土をかぶせておきます。

玉直し(玉返し)

スイカの実の地面に接している部分は、そのままでは日光が当たらず色づきません。そのため、全体が色づくように定期的に上下をひっくり返す玉直し(玉返し)が必要です。ある程度実が大きくなったら玉直しをして、収穫までに4~5回ほど行ってください。

収穫

品種によりますが小玉スイカなら受粉後35日ほど、大玉スイカなら受粉後40~50日が収穫のタイミングです。人工授粉した際に日付などのラベルをつけておくと良いでしょう。実の成長具合を見て収穫するかを決定することもできます。スイカの実の表面を手で軽く叩き「ポンッポンッ」と澄んだ音がするようであれば収穫時期です。または、実のついた節から出た巻きひげが枯れていたり、実のついた節の葉が枯れていたりする場合も収穫しましょう。ヘタの部分をハサミなどで切って収穫します。スイカは収穫後に、すぐ食べるのではなく2~3日ほど熟させてから食べると甘味が増し、よりおいしくいただけます。

5章:収穫前にスイカの実が割れる原因

実の生長に皮が追い付かなくなると裂果してしまうことも

 スイカの栽培をしていると、せっかく大きく育ちつつあった実が収穫前に割れてしまうことがあります。この現象を裂果といいます。原因は中の実の生長に対して、皮の生長の方が間に合わなくなったことです。
 ではなぜ生長差ができてしまうのかというと、原因としてまず考えられるのが水のやりすぎです。スイカは乾燥気味の環境を好みます。しかし、みずみずしい実のイメージから、ついつい水をやり過ぎてしまうとスイカの実はその水分を吸収し急激に育ってしまうのです。
 ただし、実の生長に対して皮は同じように生長できません。そのため、皮が実の生長に耐え切れなくなり結果として裂果してしまうのです。くれぐれも水のやりすぎには注意してください。
 また、気温の低下や強い日光に当たった場合にも裂果がおきてしまう場合があります。着果した後に実が肥大する過程で急激な低温となった場合に、皮が硬くなってしまうことがあるのです。皮が硬い状態で実の部分の生長が進むと、皮に圧力がかかり結果的に裂果が起こることがあるのです。
 逆に気温が急上昇した場合も実の生長に皮の生長が追い付かなくなり裂果が起きてしまうこともあります。このようなことが起きないようにスイカの栽培には温度の管理がとても大切なのです。マルチなどを張り、急激な温度変化や水分の管理を徹底するのが良いでしょう。

6章:カラスなどの害鳥対策

スイカはカラスにとって格好の獲物

 家庭菜園などで気をつけなくてはいけないのがカラスです。スイカもカラスにとっては格好の獲物。畑にむき出しのスイカがあればあっという間につつかれ、ダメにされてしまいます。
 せっかく時間や手間をかけ、大事に育てたスイカが収穫前に食べられてしまってはたまったモノではありませんね。しっかりと対策をしておきましょう。
 方法はいくつかあります。まず、カラスの死骸にみたてた模型などを畑に吊しておくというのが効果的とされています。
 ホームセンターなどでカラスよけとして売られていますのでこちらを設置してみましょう。ただし、すでに他の畑で慣れてしまっているカラスへの効果は期待できません。他の方法も併せて試してください。
 他の方法としては、単純ですが実にカゴをかぶせるというのも良いでしょう。スイカの実にプラスチック製のカゴやネットをかぶせるのです。ただし、ただカゴをかぶせただけだと賢いカラスは器用にそれを外してしまいます。簡単に外れないようにしっかりとめておきましょう。
 また使用するカゴやネットは、スイカの生長を妨げないように日光を極力遮らないものを選ぶようにしてください。

7章:スイカ栽培で必要な害虫対策

アブラムシを発見したらすぐに補殺しよう

 スイカの栽培には害虫対策も重要です。温かくなってくると害虫が発生しやすくなりますがスイカに発生しやすい害虫としてはアブラムシ類、ウリハムシ、ハダニ類などがいます。
 もし害虫が発生してしまったら早期に対処しましょう。葉に虫食いなどがないか確認して害虫を見つけたら早めに補殺します。虫の数がわずかであれば粘着テープなどでペタペタと取り除くと良いでしょう。大量に発生してしまったら、野菜用の殺虫剤を使ってください。

8章:プランターでの育て方

マンションのベランダでも栽培できる

 畑がなくても小玉スイカであれば、ベランダのプランターで栽培することも可能です。基本は地植えと変わりませんがいくつかのプランター栽培ならではのポイントを紹介します。
 種から育てるのは難しいので市販されている苗を使うと良いでしょう。栽培の時期は地植えと同じです。使用するプランターは大型タイプ(60cm以上)のもので深さも20cmくらいの深鉢タイプを用意してください。
 1つのプランターには1株で育てるようにしましょう。十分暖かくなった4月下旬ごろに苗を植えます。まず用意したプランターの底に鉢底石を敷き野菜用培養土をプランターのフチから2~3cmほどの深さまで入れます。中央に苗を植えるための穴をあけたら根鉢を崩さないように注意しながら苗を植えます。水をやったらホットキャップで保温します。
 小さなスペースで栽培するには空中栽培がオススメです。鉢の四隅に長さ180cmほどの支柱を差し、先端をひもで結んで高さ150cmくらいのピラミッド型の支柱を組みます。生長しつるが伸びてきたらその都度ひもで支柱につるを絡みつけます。また、数本の支柱を垂直に立て、周囲を紐などで囲むあんどん仕立ての支柱も簡単でオススメです。
 つるは親づると、子づるを1つだけ残して、あと摘芯して2本仕立で育てましょう。伸びてくる孫づるは全て摘芯してかまいません。マンションの高層階などで栽培している場合は花をつけたら人工授粉も行います。やり方は地植えと同じです。
 水やりは植え付け時にたっぷりとやり、あとは乾燥がひどい場合に行う程度でかまいません。過度な水やりは厳禁です。
 追肥はプランターの場合は一回でかまいません。3週間ほど経って実がある程度大きくなった際に、株元に化成肥料を10gほど撒き土と混ぜ合わせます。急激な温度変化に気を付け、定期的な玉直しを行い、病害虫対策も欠かさず十分に生長したところで収穫です。

まとめ

 夏の果実だけあってスイカは高い気温と強い日差しを好みます。栽培は日当たりが良く、水はけが良い環境で行いましょう。スイカは着果後、実がみるみる大きくなりますので、裂果を起こさないように水や温度の管理にも十分気を付けてください。上手に育てることができれば、夏の暑い時期に甘くみずみずしい実を楽しむことができるはずです。
 もし畑がなくてもプランターを使えばマンションなどでも栽培することは可能です。スイカ好きの方ならぜひ一度スイカ作りに挑戦してみてください。

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