ハンマーの種類と使い方・注意点

DIYで使用頻度の高いツールの1つが、金づちや木づち、玄翁(げんのう)などと呼ばれる、いわゆるハンマー(つち)です。ハンマーは、金づち以外にもネイルハンマーやトンカチなどともいわれますが、これらは全て同じカテゴリーに入る工具です。使い方はとても簡単で、柄を握って先端の打撃部分を釘などに振り下ろすだけ。
とてもさまざまな使い道がある道具ですから、DIYなどが趣味でなくとも、誰もが一度は使ったことがあるはずです。
しかし、一口にハンマーいっても、実は意外にその種類は多く、打撃部分の形状にも思いのほか違いがあります。また、その使い方にも、実はちょっとしたコツがあるのです。そんなハンマーについて、種類の違いや使い方のポイントなどを分かりやすくご紹介します。

1章:ハンマー、金づちとは
2章:ハンマーのさまざまな種類と形状
3章:一般的な片手ハンマーの使い方と注意点
4章:ハンマーの選び方
5章:ハンマーのメンテナンス、柄の交換方法
まとめ

1章:ハンマー、金づちとは

金属製だけでなく木製やゴム製のものもある

Hammer(ハンマー)は日本語の“つち”を英語で表記したものです。つまり基本的には同じものを指します。そんなハンマーの中でも最も一般的で、我々にもなじみ深いのが金づちでしょう。
 金づちは金属製のつちのことで、先端の打撃部分がその名前の通り鉄などの金属でできています。ホームセンターのハンマー売り場などに行ってみると、同じ金づちと言われるものでも、打撃部分をよく見ると、その形状はどれも同じではなく、種類によってさまざまな形のものがあるのが分かるはずです。
 例えば片方が打撃用で、もう片側が釘抜きなどになった片口タイプのもの。さらに両方が打撃に使用できる両口タイプのもの。そして、打撃部分の片方が球状になった片手ハンマーなどというものもあります。
形状の違う理由は、デザイン的な遊びではなく、もちろん使用目的が異なるからです。また打撃部分が木製の木づちや、プラスチック製のプラスチックハンマー、ゴム製のゴムハンマーに加えて、ゴムとプラスチック2種類の打撃部を持ったコンビネーションハンマーなども存在します。
打撃力の強い金属製のものは、主に各種打撃作業や釘などの打ち込み、板金作業に使われます。打撃時に対象に傷を与えにくい樹脂製やゴム製のハンマーは、固着して外れなくなってしまった部品の分解や、各種シールなどの挿入に使われます。ハンマーを選ぶ際、使う際には、このような用途の違いを知っておく必要があるのです。

2章:ハンマーのさまざまな種類と形状

使用目的に合わせて使い分ける

ハンマーの打撃部分に違いがあるのは、使用する目的に合わせて適切な形、デザインになっているからというのは説明しました。では、どのハンマーが何に適しているのでしょうか。そこで、ここでは、代表的なハンマーの種類とそれぞれの特長などを紹介します。

●ネイルハンマー
片側が打撃面、もう片側が釘抜きになっている、西洋から入ってきた金属製ハンマーです。そのデザイン上、金づちよりも重心が打撃面に近いため、釘打ちの際に安定しやすく、初心者にも使いやすいとされています。

 

●鉄工ハンマー・片手ハンマー
打撃部分の形状が、片側が平面でもう片側が球状になっているハンマーが、鉄工ハンマーや片手ハンマーなどと呼ばれるものです。主に金属加工などに使用しますが、平らな方は金属加工だけでなく、釘打ちやピンなどの打ち込みにも使用可能です。球状になった部分では、鉄板などの曲げ加工などを行います。比較的重いので、釘打ちなどに使用する場合は注意が必要です。

 

●両口ハンマー(両口ゲンノウ)
一見両側が同じ形状に見えますが、よく見ると片側が平らで、もう片側が緩い曲面になっています。曲面側は釘の頭をしっかりと打ち込み、周囲の木材の面に頭を揃える際に使います。はじめから曲面側で釘打ちを行うと滑りやすいので、通常は平面側を使ってから仕上げに曲面側を使います。

 

●両口ハンマー(八角ゲンノウ)
両口ハンマーの一種ですが、こちらは断面が八角形です。側面の平面になった部分でも、釘などの打ち込みが可能です。スペースに余裕がなく、金づちを縦に大きく振れない場合には、この側面を使用します。

 

●片口ハンマー(唐紙づち)
釘シメなどに使用する金づちです。釘シメとは、金づちの頭が入らない狭い場所に、釘をしっかり打つこと。そのため打撃部分の一方が尖っていて、狭い隙間などにも入るようになっています。

 

●ショックレスハンマー
樹脂などでできた打撃部の内部に、小さな鋼球などの重りが入っています。打ち込んだとき重りが移動することで、反動を吸収してくれます。

 

●プラスチックハンマー
叩く対象を傷めにくいようにデザインされた、プラスチック製のハンマーです。打撃面が樹脂でできており、木工製品や機械などの組み立てに使用されます。中心部分は金属でできているので、打撃力も確保されています。

 

●木づち
木工製品をダボへのはめ込む際に使用するつちが、木づちです。こちらもハンマーの一種で、打撃部分が木でできているので、木材などにも傷がつきにくくなっています。

 

●ゴムハンマー
打撃部分がゴムでできたハンマーです。木工製品の組み立てなどの際に使用しますが、直接叩いても跡が残りにくいのが特長です。樹脂ハンマーより重量があるので、打撃力も十分にあります。

 

●コンビネーションハンマー
打撃部の両側に金属とゴム、プラスチックとゴムなど、異なった素材の打撃面を取りつけることができるハンマーです。用途によって自由に組み合わせを変えられます。

 

●レンガつち・ブロックつち
打撃部に鋭く尖った先端があり、この部分でレンガやブロックなどを彫る、割るなどの作業を行います。

 

●電工ハンマー
電気工事などに使われるハンマーです。グリップの台尻部分がソケットレンチになっており、ハンマーとしてだけでなく、ソケットレンチとしても使用可能です。

 

●溶接用ハンマー・チッピングハンマー
溶接作業によって、母材に付着したスラグ(熱で溶けた不純物など)などを、叩いて落とすためのハンマーです。

3章:一般的な片手ハンマーの使い方と注意点

打撃面を使い分けて美しく仕上げる

まっすぐ釘を打つには、先に下穴をあけておくのがオススメです。また、代表的な金づちである両口ゲンノウの賢い使い方も紹介します。

●キリで下穴をあけてから釘を打つ
釘を打つ際は、まず、木材にキリで下穴をあけておきます。次にその穴に釘を立てて、ハンマーの柄を短く持ち、釘が自立する程度に軽く打ち込みます。次にハンマーの柄の先端に近い方を軽く握って、ヒジを支点に手首のスナップを効かせながら、頭の重さを利用して振り下ろします。

 

 

●両口ゲンノウの使い方
両口ゲンノウは、釘打ちの際に打撃面を使い分けることで仕上がりが美しくなります。両口ゲンノウの打撃面をよく見てください。片側が平面、もう片側は緩い凸状の曲面になっていることが分かるはずです。釘打ちは、基本的に平面側を使用します。釘をほぼ打ち込むことができたら、最後の仕上げに曲面側を使用します。この曲面は木殺しといわれ、釘の頭をしっかりと木材などに打ち込み、釘の頭と木材の面を揃えることが可能です。さらに、凸状になっているため、木材などの表面に跡が残りにくいという特長があります。しかし最初から凸面を使用すると滑って釘をまっすぐ打ち込みにくいので、はじめは平面、仕上げに曲面と、うまく使い分けてみてください。

両口ゲンノウの打撃面には、平面と曲面があります。基本はこちらの平面側で釘を打ちます。

平面の反対側は、このように緩い曲面になっています。こちらは釘打ちの最後の仕上げに使用します。

4章:ハンマーの選び方

実際に握ってみて扱いやすいサイズを選ぶ

ハンマーは種類によって打撃部分の形が違うだけでなく、頭の大きさや重量も違います。重いものほど打撃力が高くなり、釘などを打ち込みやすいとされていますが、あまり重いハンマーは持ち上げるのにも力が必要になり、慣れていないと正確に振ることができません。

売り場などで実際に手に取り、軽く振ってみて自分で扱えるかどうかを確認してから購入するようにしましょう。

 

●ハンマーのサイズ
ハンマーのサイズは、主に重さで区別されており、ハンマーの柄などにその重さの数字が表記されています。ゲンノウの場合の標準的なサイズは375gです。これは日本で昔から使われていた重さの単位で、100匁に相当します。金工・鉄工用のハンマーの場合は、120匁=450gほどが標準とされています。大工仕事用にハンマーを選ぶ際、標準とされる両口ゲンノウが重いと感じる場合は、それより軽いネイルハンマーなどを選ぶと良いでしょう。ネイルハンマーは、重心が打撃部分の真ん中ではなく、打撃面側にあるため、握った際に打撃面側が真下に向きやすく、コントロールが容易です。はじめて使うハンマーとしては、ネイルハンマーがオススメです。ただし打撃力に関しては、ネイルハンマーは両口ゲンノウに劣ります。慣れてきたら十分な重さがあり、打撃力も期待できる両口ゲンノウを使ってみるのが良いでしょう。

5章:ハンマーのメンテナンス、柄の交換方法

傷んだ木製の柄は簡単に交換できる

最近は金属製や樹脂製のものもありますが、金づちの柄は多くの場合木製です。この柄は使用に伴い徐々に傷んでしまったり、折れてしまったりすることがあります。そうなってしまっても、打撃部分に問題がなければ、傷んだ柄を交換することで使い続けることが可能です。交換用の柄や固定用の楔は、ホームセンターなどで購入可能です。

交換する場合は、まず柄を取り外します。金づちの打撃部左右を、裏から別のハンマーなどで叩いて抜き取ります。抜けにくい場合は、柄に打ち込まれている古い楔の左右部分を削って、楔を抜き取ると柄が抜けやすくなります。

古い柄が抜き取れたら、用意した新しい柄をコミ(打撃部の四角い穴)に差し込みます。入りにくい場合は、柄のおしりの部分をハンマーなどで叩いてください。柄の頭部分が大きくはみ出した場合は、ノコギリなどで切り取り、高さを揃えます。

最後に、柄の部分の頭に上から楔を打ち込み、打撃部分を固定したら完了です。

交換用に売られている金づちの柄。さまざまなサイズがあるので、適したものを選びましょう。

楔にもさまざまなサイズがあります。柄を交換する際は、合わせてこちらも購入しましょう。

まとめ

釘や部品などの対象を叩くシンプルなツールであるハンマーですが、なじみのある金づち以外にもさまざまなタイプがあるということがご理解できたでしょうか。
 このように種類が豊富な理由は、それぞれを用途に合わせて使い分ける必要があるということでもあります。作業に適していないハンマーの使用は、作業の効率を下げるだけでなく、場合によっては対象を傷つけたり、使用者のケガにつながることもあります。シンプルな道具だからこそ、基本を守り正しく使用することが肝心です。どんなハンマーが何の用途に適しているのかを正しく知って、トラブルのない作業を心がけてください。

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