震災時の通電火災を防ぐ
電源遮断装置の使い方

 自然災害、とくに大規模な地震が発生したときに被害を拡大するのが家屋火災です。そのなかでも原因の多くを占めるとされているのが電気系火災のひとつである『通電火災』。地震の発生後、住人の避難中に起きることが多いため、初期消火が難しい火災と言われています。ただ通電火災は準備によって防ぐことができるので、防災情報として正しい知識を身に着けておきたいものです。自然災害から大切な家財を守るために、その発生のメカニズムと対策として有効と言われる電源遮断装置について解説します。

目次
第1章:電源遮断装置とは? 
第2章:電源遮断装置のしくみ
第3章:電源遮断装置の取りつけ方
第4章:電源遮断装置を設置するときの注意
まとめ

第1章:電源遮断装置とは? 

■地震火災の多くは通電火災

 『通電火災』をご存知でしょうか。通電火災とは地震で停電が発生したときに、復旧して通電が再開される際に発生する火災のことを言います。

 通電火災がよく知られるようになったのは、阪神・淡路大震災による被災状況の調査結果からでした。神戸市によると、震災のときに神戸市内で発生した157件の建物火災のうち、原因が特定できた55件中の約6割にあたる33件が通電火災だったとのことです。

 二次災害である通電火災を防ぐことができれば火災被害を減らすことができるため、最近は各地の自治体でも防災情報のなかで通電火災への注意を呼びかけるようになっています。

■通電火災はどのように発生する?

 大地震の被害で送電線の断裂や電力施設の損壊などがあると、同じ電力網に接続されている一帯で停電が起きます。その後、復旧が進んで数時間から数日して電気の供給が再開されたとき、燃えやすいものが電気ストーブなどに接触していると引火して火災が発生するのです。原因はさまざまですが、以下のようなことが考えられます。

・電気ストーブやトースターなどの電熱器具に、散乱した紙や衣類が接触して引火。
・壊れたコンセントや押しつぶされた状態の電気配線に通電し、発熱して発火。
・ガス漏れしているところに通電して引火。
・水に濡れた製品内部の電子回路が、通電でショートを起こして発火。

 いずれの場合も、初期段階で消火できれば火災が広がることはありませんが、通電火災は災害発生から時間が経過し、住人が避難しているときに起こることが多いため、家屋の全焼や延焼につながる可能性が大きくなります。このように時間差で発生する点も通電火災の恐さと言えるでしょう。

■電源遮断装置の役割

 通電火災は事前の知識があれば防ぐことはとても簡単です。避難する前にブレーカーを落とすだけで良いのです。しかし、家屋が倒壊する恐れがあるとき、停電してまっ暗になっているときに、忘れず冷静にブレーカーを落としに行けるでしょうか。倒れた柱や家具を乗り越えてブレーカーにたどり着けるでしょうか。心構えをしておくことができたとしても、いざ実行するとなるととても難しいことなのです。

 そこで通電火災を防ぐ現実的な方法として推奨されているのが、感震装置付きブレーカーや電源遮断装置の設置です。どちらも大きい揺れを感知すると自動的にブレーカーを落としてくれるので、避難する前に配電盤まで行って操作する必要がありません。

 ブレーカー自体を感震装置付きのタイプに交換するには電気工事が必要で費用もかさみますが、簡易タイプの電源遮断装置は数千円で購入できて自分で設置することができます。作動するのは大規模地震の発生時だけですが、通電火災による二次災害を防ぎたいという方にはとても有効な防災アイテムと言えます。

第2章:電源遮断装置のしくみ

 配電盤の工事をしないで簡単に取りつけられる簡易タイプの電源遮断装置は、『通電火災防止装置』や『感震ブレーカー』などの名称で販売されています。多くの商品はブレーカーの近くにセットしておき、大きい揺れを感知すると装置が作動してブレーカーレバーを引き下げるという仕組みです。

 代表的なものが球状のおもりを利用するタイプ。設定しておいた大きさの揺れが起きると、おもりが台座から落ちてレバーに連結されたヒモを引っ張り、レバーを下に引いてブレーカーを落とします。とても単純な仕組みで、故障や動作不良の心配がほとんどないところはこの用途にぴったりです。

 そのほか独自の感震センサーを内蔵して、バネの力でブレーカーのレバーを下げるタイプなどもあります。自宅の配電盤に取りつけが可能かを確認し、作動震度や作動方法などを比較して選ぶと良いでしょう。
球状のおもりを使うタイプ(写真の商品は『スイッチ断ボール』というもの)。とても単純な仕組みですが、ちゃんとブレーカーを落としてくれます。
大きい揺れを感知するとバネの力でブレーカーのレバーを引き下げるタイプです。おもりタイプと同様にレバーの近くに設置します。

第3章:電源遮断装置の取りつけ方

 ここでは一例として、おもりを使用する電源遮断装置の取りつけ方を解説します。同じしくみの装置でも商品によって設置スペースの大きさや位置が異なります。設置スペースの確認や実際の取りつけは、商品に付属の説明書を参考に行ってください。
①本体:下部は水平器のついた台座、上部はキャップストッパーになっています。ブレーカーの下に設置スペースがない場合は、上下を切り離して貼りつけます。

②球状おもり:大きい地震が発生すると台座から転がり落ち、ヒモを介してレバーを引き下げます。加速度を高めたいときは付属の長いヒモに交換します。

③震度調整用リング:この製品は台座の大きさによって装置が反応する(おもりが落下する)震度を調整します。リング未使用時は震度5強以上、調整リング(小)取りつけ時は震度6以上、調整リング(大)取りつけ時は震度7以上に設定できます。

④レバーキャップ:ブレーカーレバーにヒモをつなぐために使用。レバーの形状に合うものを選んで使用します。
(1)設置する位置を決める
粘着フックの形はさまざまです。

フックを回転させられるタイプや、本体が木製のタイプなどがあります。

部屋のインテリアや使用目的によって使い分けることができるので、ホームセンターで実際に商品を手に取って好みのタイプを選ぶことをオススメします。
(2)本体を取りつける
取りつけ位置の表面にホコリなどがないようにきれいに拭き、セロハンテープやマスキングテープで本体を仮どめします。
本体についている水平器の気泡を確認しながら、左右方向の水平が出るように貼りましょう。
続いて台座の前後方向の水平を出します。台座の下についている調整ネジをドライバーで回し、水平器の気泡が中心にくるように台座の角度を調節します。

取りつけ位置がわかるように鉛筆やテープで印をつけておき、本体後面についている両面テープの剥離紙を剥がして配電盤に貼りつけます。

貼り直しができないので、しっかり位置決めをしてから両面テープで貼りましょう。
(3)おもりを設置する
 おもりの設置作業は、本体を貼りつけてから半日以上おいてしっかり接着できてから行います。
設定したい震度の調節リングを選んで置き台にはめます。
おもりを置き台の上にのせ、キャップストッパーの穴に付属のヒモを通します。ブレーカーレバーの形状に合うキャップを選んでヒモの先に結びつけ、レバーに被せて設置完了です。
(4)動作を確認する
 遮断器が正常に遮断することを確認します。電源が遮断されても問題ないことを確認してから、指でおもりを軽く押して落とし、ブレーカーが落ちることを確認しましょう。標準のヒモでレバーが下がらない場合は、加速度を増すために付属の長いヒモにつけかえて再度テストしましょう。
(5)ブレーカーの下に本体を設置できない場合
 本体を切り込みに沿ってハサミで切り分けます。キャップストッパーのついている上部をブレーカーの下に貼り、空いているスペースに(2)の要領で本体を設置します。
カバーつきの配電盤に設置したときは、カバーを完全に閉めないようにしましょう。ヒモが挟まるとレバーを引き下げられず、電源を遮断できません。

第4章:電源遮断装置を設置するときの注意

■電源遮断装置を設置できないケース

 生命維持装置などの医療機器は、不意に電源が遮断されると利用者の状態を急変させることが考えられます。医療機器が接続されている電気回線には使用しないようにしましょう。また、パソコンを起動中に電源が遮断されると、内部の電子部品が損傷する可能性があります。設置する場合にはそのことを理解しておく必要があります。

■照明機器の準備

 電源遮断装置は設定した震度の地震が発生すると、停電が起きない場合でもブレーカーが落ちて電源が遮断されます。夜は部屋の照明器具が使えずまっ暗になるので、懐中電灯や停電時に点灯する非常灯などを備えておきましょう。

■再通電させる前に安全を確認

 避難先から帰宅したときには、いきなりブレーカーをあげるのではなく、電気機器や設備、それらの周囲を確認しましょう。電気ストーブやトースター、アイロンなどの電熱機器のスイッチが入ったままになっていたら、スイッチを切って電源プラグをコンセントから抜きます。機器の周囲に燃えやすいものがないように、部屋の中に散乱しているものを片付けてから再通電する必要があります。

 また、機器の本体や配線を確認し、異常がある場合にはそのまま使わないようにしましょう。

まとめ

 通電火災はテレビの防災企画などで取り上げられることはあるもののまだまだ知られておらず、電源遮断装置の普及も進んでいないのが現状です。自宅を震災時の火災から守るため、周囲への延焼を防ぐために、ご家庭での災害対策のひとつとして設置を検討されてはいかがでしょうか。

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