物置をDIYで作る

目次
1.物置の基本的な作り方は?
2.DIYで物置を設置するためにかかる費用は?
3.物置の基礎作りって何をしたら良いの?
4.屋根の勾配角度ってなに?
5.屋根や外壁にはどんな素材が良いの?
6.外壁や屋根におすすめなガルバリウム鋼板って?
7.物置に設置するドアの選び方は?
8.DIYで物置をメンテナンスするには?
まとめ

 車やバーベキュー用品、庭掃除や園芸、日曜大工の道具など、屋外で使うことの多いものは、屋外に収納できる物置小屋があると便利です。ただ、市販品となると金属製や樹脂製のものが主流で、雰囲気の良い木製のキットは高くなりがちです。もし、希望通りのサイズやデザインのものが見つからなければ、物置小屋のDIYを考えてみませんか。どんなプランを立てれば良いのか、物置作りに必要な構造や資材についての基礎知識を解説しますので、自作する際の参考にしてください。


1.物置の基本的な作り方は?

そもそも物置にも建築確認申請は必要?

 物置というと、しっかりとした基礎を作らず、地面に置くだけの場合も多く、便利で手軽な倉庫というイメージがあります。ところが建築基準法では、柱や壁の上に屋根があるものは「建築物」とみなされ、原則として役所などへの建築確認の申請が必要になります。例外として、以下の条件を満たしていると申請手続きを省略できるとされています。

・住宅が建っている敷地が、防火地域、準防火地域ではない。
・物置の床面積が10m2以内である。

 地域の指定について不明な場合は、市区町村の都市計画課などで確認しておきましょう。


DIY向き! パネルで箱を組み立てる2×4工法

 住宅建築に少しでも興味のある人はよくご存知でしょうし、そうでない人でも住宅の広告やテレビCMで「2×4(ツーバイフォー)」という呼び名くらいは聞いたことがあるでしょう。2×4工法は正しくは「木造枠組壁工法」と呼ばれ、アメリカで考案され広まった木造建築の工法です。日本の伝統的な住宅工法が柱と梁という軸によって組み立てるのに対し、壁という面で作成するのがこの工法です。

 段ボール箱を思い浮かべてみてください。素材のダンボール紙そのものは簡単に折れ曲がってしまうのに、組み立てて箱の状態になると積み重ねてもやすやすとは潰れないくらいに強度が高くなります。2×4工法で作る建物は、床と壁、天井(屋根)という6つの面で構成された、まさに木造の箱です。ウッドデッキDIYと同じようにして土台となる床を作ったら、その上に角材と合板で組んだ4枚の壁を立て、屋根を載せたらできあがりととても簡単なため、物置小屋作りでは人気の工法です。

 ちなみに、構造材として規格材である2×4材を使うことから、2×4工法という呼び方が一般的になっています。


柱と梁で組み立てる在来工法

 日本では、住宅はもちろん神社仏閣などの建築物にも昔から使われてきた、柱と梁で組み立てるお馴染みの木造建築の工法です。柱という縦軸で建物を支え、その柱を梁という横軸で繋いで固定するため、軸組工法とも呼ばれます。本来はホゾや継手を使って組み立てるため、木材の正確な加工技術が必要な工法ですが、現在では各種の金具を使って接合する簡易な方法も一般的になっています。

 柱をいかしたデザインにしたいなど、こだわりながら物置作りを楽しみたい場合は、あえて軸組工法に挑戦してもおもしろいかもしれません。


2.DIYで物置を設置するためにかかる費用は?

デザイン性かコストか

 物置の製作、設置にかかる費用は、大きさや使用する資材によって大きく変わります。外観や防水性にこだわって理想を追求すれば、自分で手作りしても当然、総費用はかさみます。反対に、下地材や防水シートを省いて、外装を波板で仕上げる簡易な構造にすれば、大幅にコストカットすることができます。また、木材や合板などの規格をもとに壁や床のサイズを決めることで、材料をムダなく使えて細かいコストカットができます。端材などのゴミも減らせるので、図面を描き起こす段階で考慮したい要素です。


ガーデンハウス風物置の設置費用概算

 標準的なサイズの物置をガーデンハウス風に作った場合の材料費の概算を書いておきますので、サイズ決めや材料選びの参考にしてください。以下はDIY工具が揃っていると仮定して、主な材料費を割り出したものです。

・想定サイズと仕様
 【幅1,820×奥行1,445×高さ2,220㎜】
 2×4工法による片屋根の小屋で、外壁は杉板を横方向に重ねながら張る下見張りとする。

・使用する資材とおおよその数量
 SPF 2×6(3,660mm) 16本
 SPF 2×4(3,660mm) 16本
 SPF 1×4(3,660mm)4本
 構造用合板(12×910×1,820mm) 12枚
 杉板(12×180×1,800mm) 70枚
 ルーフィング(防水紙) 6m
 屋根材

目安の資材費総計:約18万円

3.物置の基礎作りって何をしたら良いの?

ブロックなどの簡易な基礎を利用しよう

 地面と建物の間で、建物を安定して支える部分を基礎と言います。庭に物置を作るときにも、地面の上でしっかり踏ん張れるように基礎が必要です。建物の基礎には、土台を何本もの線状に配置した基礎で受ける「布基礎」、土台全体を面で受ける「ベタ基礎」などがあります。住宅や大きめの小屋を作るときには、コンクリートで布基礎やベタ基礎を作るのが一般的ですが、床面積が10m2以下の物置ではそこまで大げさなものを考える必要はありません。物置が傾いたりしないでしっかり立っていられるように、丈夫な資材を数ヶ所に設置する「独立基礎」でOKです。ホームセンターで売っている、束石(つかいし)や沓石(くついし)、コンクリートの平板やピンコロ、重量ブロックなどが、基礎石として利用できます。

 基礎を設置するときに大切なのは、なにより地盤の状態です。地盤がゆるくて後々に沈んだりしては、安定した基礎の役割を果たせません。基礎石を置く場所を少し掘り下げて砕石や砂利を入れ、タンパーや重量ブロックなどを使ってよく突き固めてから設置するのがポイントです。大きい地震、台風や竜巻などの強風が心配なら、穴を大きめに掘ってコンクリートやモルタルを入れて固定したり、地面に打ったモルタルと物置を丈夫な金具でつないで固定するアンカー工事をする方法もあります。


4.屋根の勾配角度ってなに?

屋根の耐久性アップに勾配は不可欠

 屋根は建物を支える大事な構造部分であり、作り方が雨漏りにも関係します。特に雨漏りを防ぐために気をつけておきたいのが、屋根勾配という屋根の傾きの角度です。物置作りでは住宅ほど神経質になる必要はありませんが、雨漏りのリスク、汚れのつきやすさ、メンテナンス性など、また雨や雪の量といった地域の気候を考えて決めておくと良いものです。勾配の目安とメリット・デメリットを簡単に説明しておくので、参考にしてください。

 屋根勾配は、水平方向に対する立ち上がりの寸法の比率で表されることが一般的です。例えば、水平寸法1mに対して、立ち上がり寸法50cmの勾配は、「5/10勾配」や「5寸勾配」のように表現されます。


勾配の緩急によるメリット・デメリット

●急勾配

6/10勾配」以上の屋根

・メリット
 水はけが良く、雪が落ちやすいため、雨漏りや積雪のリスクが小さくなります。雪国や山間部の建物で、自然に落雪させたい場合に採用される勾配です。汚れも流れやすく、屋根の耐久性が高まります。

・デメリット
 屋根面積が広くなる分、屋根用資材や塗料などのコストがかさみます。屋根の上に乗って作業するのが難しいため、大きさによっては塗り替えなどのメンテナンス作業が大変です。

●並勾配

3/10〜5/10勾配」の屋根。

・メリット
 雨漏りがしにくく、メンテナンスが必要になったときも屋根に登って作業ができます。実用性とデザイン性、経済性のバランスが良く、温暖地域でスタンダードな勾配です。

●緩勾配

「3/10勾配」以下の屋根。

・メリット

 屋根面積をもっとも狭く作ることができて、設置や補修のコストを抑えられます。屋根の上でのメンテナンス作業がしやすいです。

・デメリット
 水はけが悪くて雨漏りしやすくなります。汚れが溜まりやすく、一緒に水分や化学物質が滞留するので、屋根材や下地材が傷みやすくなり耐久性が低下します。


屋根材に合わせる必要も

 屋根勾配は使用する屋根材の種類によっても変わります。トタンやガルバリウムなどの金属屋根は1/10以上、アスファルトシングルは3.5/10以上など、雨漏りの発生などを防ぐために最低勾配を確保する必要があります。


5.屋根や外壁にはどんな素材が良いの?

デザイン性と耐候性に関わる外装材

 物置の屋根材や外壁材は、防水性や耐候性とともに建物の外観にも関わってきます。庭や駐車場の景観にこだわりたければ、ナチュラルさやカントリーっぽさを出したいのか、家のデザインに合わせてモダンな感じにしたいのか、仕上げたいイメージによって、使う素材や材料の見た目も気にしたいところです。とはいえ、屋根も外壁も面積が広く、使う資材の量が多いため、総費用に占める割合が大きくなります。製作予算とデザイン性のバランスを考えながら検討する必要があります。


物置に使いやすい屋根材

・アスファルトシングル

 アスファルトシングルはカナダで100年以上前に考案され、北米では住宅用としてポピュラーに使われている屋根材です。ベースとなるグラスファイバーにアスファルトなどを塗り重ねた板状をしていて、薄くて軽いうえに防水性と耐火性にも優れています。柔らかいため曲面への張りつけも可能です。住宅用だけあって見た目が良く、カッターで切って、接着剤とクギで張りつけできる簡単さもあり、DIYでの物置作りにもよく使われます。ただし、材料費は金属波板の3~4 倍になります。

・金属波板

 お馴染みなのが、小屋の屋根・壁材として昔からよく使われてきたトタン波板です。鉄の鋼板に亜鉛メッキを施してあり、ただの鋼板に比べてサビにくく耐久性が高くなっています。加工には金切りバサミやグラインダーを使うので手間がかかり、慣れが必要ですが、軽量で安価なところが魅力です。再塗装なしで、耐久年数は5~7年とされています。鋼板に、亜鉛とアルミを合わせたメッキが施され、トタンよりもサビに強いガルバリウム鋼板も、最近は使われるようになっています。

・ポリカ波板

 樹脂製の波板には塩化ビニール製とポリカーボネート製があります。紫外線や太陽熱、風雨による劣化が激しく、耐久年数が短い塩ビ波板に比べ、耐衝撃性、耐候性、透明性に優れているポリカ波板は外装材として魅力的です。価格はトタン波板の1.5倍程度になりますが、耐久年数は7~10年とされ、物置の屋根・壁材にも適しています。外観の好みの分かれるところですが、屋根と壁のすべてにポリカ波板を使うと、採光の良い内部の明るい物置を作ることができます。


物置に使いやすい外壁材

 屋根材として紹介した金属波板、ポリカ波板は、外壁材としても使用できます。そのほか、ウッディなガーデンハウス風に仕上げたい場合には、木の板材を外壁材として使うのが一般的です。杉板などを少しずつ重ねて横に張る下見張りにしたり、面を揃えて並べてもすき間なく張れるように加工された実材(さねざい)を使う方法があります。


6.外壁や屋根におすすめなガルバリウム鋼板って?

耐久性とデザイン性を備えた金属系外装材

 物置の外装材として、少しずつ利用者が増えているのがガルバリウム鋼板といわれる金属板です。屋根材のところでも少し触れましたが、ガルバリウム鋼板は鉄にアルミ、亜鉛などからなる合金メッキを施した鋼板です。アルミと亜鉛の特長を併せ持つことで、従来のトタンより耐久性に優れ、あらゆる用途に利用できる建築用外装材として活用されています。酸性雨や塩害など、使用する地域の条件によって異なりますが、耐久年数はだいたいトタンの3~5倍となる15~25年と言われ、金属製の外装材としては非常にサビにくい特長を持っています。またデザイン性が高いことから、最近は日本の住宅でも好んで使われるようになっています。

 ガルバリウム鋼板のデメリットとしては、トタンに比べて費用がかさむこと、ほかの金属に接触するとサビやすい性質のため、取り扱いがデリケートであるなどがあげられます。

7.物置に設置するドアの選び方は?

DIY製作には開き戸がおすすめ

 ドア扉には「開き戸」と「引き戸」の2タイプがあります。引き戸は、開けた扉が収まるスペースが必要で、さらにスムーズに開閉するようにレールや戸車を取りつける技術が求められます。物置のように屋外で使う場合は、雨やホコリなどによるトラブルの可能性も高くなります。物置の扉としては、そうした問題が少ない開き戸がおすすめです。開き戸の「片開き」と「両開き」それぞれの特長を考慮して、採用するドアの種類を決めると良いでしょう。

●片開きドア
 扉が1枚で、左右のどちらか一方に開くドアです。そもそもの製作が楽で、片手で簡単に開閉できます。間口が狭いためすっきりと見えますが、大きい物の出し入れが大変です。仮に間口を広く取ろうとすると、ドアが大きくなりやすく、開けるためのスペースが余計に必要になったり、開閉が重くなったりします。

●両開きドア
 2枚の扉がまん中から左右に開くドアで、間口を広く取りたいときに向いています。物置の中を見渡しやすく、大きい物の出し入れも簡単。1枚の扉を小さく軽くできるため、開閉は楽です。扉を2枚作らなければならないこと、ちょっとした物の出し入れでも両手で開閉しなければならないことなどは、デメリットと言えます。


8.DIYで物置をメンテナンスするには?

 庭や駐車場などの屋外に設置した物置は、紫外線や雨に当たって表面から少しずつ劣化が進んでいきます。これは主に表面を保護している塗膜が劣化しているものなので、保護性能を取り戻すために定期的に塗り直しのメンテナンスを行いましょう。


木製物置のメンテナンス

 木製物置に塗られている塗料には撥水効果や防虫、防腐、紫外線カットなどの効果があり、塗装が劣化すると木材そのものが傷みやすくなって物置の寿命が縮んだり、コケやカビが発生して見栄えが悪くなったりします。1~2年を目安に再塗装をして木部を保護するようにしましょう。

■用意するもの

  • 高圧洗浄機、ブラシ
  • ハケ
  • 屋外木部用塗料(以前に塗ってある塗料と同じ種類のもの)
  • マスキングテープ、マスカー
  • 塗料バケツ

■塗り直しの手順

(1)洗浄する

 高圧洗浄機やブラシ類を使って物置の表面についた汚れを洗い流します。水を下からかけるとすき間から内部に入ることがあるので、必ず上からかけるようにしましょう。1~2日程度乾燥させ、水洗いで落とせなかった黒ずみなどがあればサンドペーパーやサンダーで削り落としてください。

(2)養生する

 丁番や取っ手などの金具、屋根との境目、窓など、塗らない部分をマスキングテープやマスカーを使って養生します。駐車場などでコンクリートの上に設置してある場合は、落ちた塗料で汚さないように床面も養生しておきましょう。

(3)塗装する

 最初は小さめの刷毛を使ってドア枠や窓枠、金具の際、屋根との境目など、細かい部分や塗りにくい部分を先に塗ります。その後、大きめのハケで広い部分を塗ります。塗装は1回で厚塗りをしないように注意し、2度塗りで仕上げることをおすすめします。

(4)後始末をする

 塗料が乾く前にマスキングテープを剥がし、ハケやトレーを洗えば作業は完了です。水性塗料を使った場合は水で洗い、油性塗料を使った場合は専用のうすめ液で洗ってください。

 

※アスファルトシングルやトタン波板を張った屋根は、8~10年に1度程度を目安に対応した塗料で塗り替えましょう。

 

 

金属製物置のメンテナンス

 市販されている金属製物置のほとんどは、アルミと亜鉛の合金をメッキしたガルバリウム鋼鈑に塗装をしたものです。鋼板(鉄)ですから、塗装やメッキに傷がついたり劣化したりすればサビが発生します。少しでも長くきれいに使い続けたいのであれば、5~7年を目安に塗り直しをすることをおすすめします。その際にお好みの色で塗り替えれば、リメイク効果もあって一石二鳥です。

■用意するもの

  • 高圧洗浄機、ブラシ
  • ワイヤーブラシ、サンダー、サンドペーパー
  • ハケ、ローラーバケ
  • 屋外鉄部用塗料またはサビ止め兼用塗料
  • マスキングテープ、マスカー
  • ローラーバケットまたはローラートレー

■塗り直しの手順

(1)サビを落とす

 錆びている部分や塗膜が浮いている部分はワイヤーブラシやサンドペーパーで擦って、できるだけきれいに落としておきます。

(2)洗浄する

 高圧洗浄機やブラシを使って砂ぼこりや汚れを洗い流し、十分に乾かします。

(3)養生する

 扉を取り外し、内側などの塗らない部分との境目をマスキングテープで、コンクリート床はマスカーやシートで養生します。屋根と側面を違う色で塗り分ける場合も、境目を養生しておきましょう。

(4)塗装する

 基本は2度塗りです。最初に小さめのハケで際や縁などの細かい部分を塗り、その後でローラーバケを使って広い面を塗ります。ローラーバケを使う際も塗料のつけすぎによる厚塗りに注意。1回目は多少のムラやカスレがあっても気にしないで全体を塗り、2回目で気になるところをきれいに仕上げるようにしましょう。

(5)後始末をする

 塗料が乾く前にマスキングテープを剥がし、ハケやローラー、バケツなどの用具を洗浄して作業は終了です。

まとめ

 物置作りは、小さいとはいえ、建物をひとつ作ることになります。手間と時間がかかり、簡単な作業とは言えません。それでも、しっかりとプランを立てて進めれば、完成できるのがDIYの面白さです。設置費用を抑えられるのはもちろん、基礎、構造、外装と、小さい家をセルフビルドする貴重な経験になるはずです。まずは家族と相談しながらどの場所にどんな大きさの物置を作るかを決め、インターネットで紹介されている写真や記事を参考に、デザインやDIYアイデアを膨らませるところから始めてはいかがでしょうか。

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