消火器の種類の違いと選び方

 一般家庭で発生する火災のきっかけの多くはちょっとした不注意です。暖房器具の誤った使用や調理中の不注意、たばこの火の消し忘れ、さらに電化製品のプラグのトラッキング現象などが原因で大きな火災につながることもあります。火災が発生してしまった場合、消防署に連絡して避難するというのが基本ですが、消火器などがあれば、初期消火を行うことが可能です。正しい方法で初期消火が行えれば被害を最小限にすることもでき、最悪の事態を防ぐことも可能でしょう。そのためにもぜひ各家庭に用意しておきたいのが消火器です。
 住宅用消火器には設置の義務はありませんし、普段あまり使用する機会もありません。そのため消火器についてどんな種類があって何を選べば良いのか分からないという方も多いでしょう。そこで家庭で使える消火器について、どのような種類があり何が違うのか、また基本的な使い方などについて詳しくご紹介します。

1章:A火災、B火災、C火災とは
2章:消火器の種類。粉末タイプと強化液タイプの違い
3章:加圧式消火器と蓄圧式消火器
4章:消火器の選び方
5章:消火器の使い方と注意点
6章:消火器の使用期限と処分方法
まとめ

1章:A火災、B火災、C火災とは

 消火器の種類や選び方について紹介する前に、まず、物が燃える仕組みについて説明します。物が燃えるには次の3つの要素が必要です。それが「熱源」と「可燃物」、そして「酸素」です。この3つが揃い連鎖反応が起きることで物が燃え、それが広がり火災となります。つまりこれらの要素の1つを取り除けば、火災を消火できるということにもなります。
 その方法が、燃焼温度を下げる「冷却消火」。可燃物を取り除く「除去消火」。そして、酸素を取り除き、火を酸欠状態にする「窒息消火」です。この消火の3つの作用のうち消火器は、窒息消火および冷却消火の原理を応用したものです。また、物が燃えるという点では同じですが、日本の消防法では火災は燃える物質によっておよそ次の3つに分類されています。

A 火災(普通火災)

 木材、紙、衣類などが燃える火災

B 火災(油火災)

 石油やガソリン(可燃性液体)、油脂類などが燃える火災

C 火災(電気火災)

 電気設備、電気器具など感電の恐れのある電気施設を含む火災
 このABC火災の消火全てに対応しているのが『ABC消火器』と呼ばれているものです。業務用消火器であれば、消火器のラベルなどにA(普通)・B(油)・C(電気)の火災種別のマークなどが描かれているので一目見ればわかります。

こちらがABC火災のマーク表示。これがあればすべての火災に対応できる消火器ということになる。
 住宅用消火器にはこのようなマークがないものもありますが、表示がないものでもABC火災に対応しているものがほとんどです。そういったものの場合は、ABCのアイコンではなく、普通火災適応や、てんぷら油火災適応、電気火災適応などといった「対応火災種別」のアイコンが描かれています。

住宅用消火器の場合、業務用消火器のようにABC火災のアイコンがないものもある。
しかし火災種別アイコンで対応できる火災の表記がされておりほとんどがABC火災に対応可能。
 消火器を購入する際は、このABC火災全てに対応している住宅用消火器、または業務用消火器を選ぶようにしてください。消火器には住宅用消火器と業務用消火器があります。
 住宅用消火器は、天ぷら油火災やストーブ火災など一般住宅の火災に適した消火器として開発された軽量で扱いやすい消火器で、本体容器の色の規制がなく耐用年数は5年程度となっています。そして法定点検などの義務はなく薬剤の詰め替えもできません。
 業務用消火器は、住宅用消火器より消火能力や使用範囲が優れています。しかしより大型で重量もある上、6ヶ月毎の有資格者による法定点検が必要とされています。また、本体容器の色に規制(容器の25%以上が赤色)があります。耐用年数は住宅用消火器よりも長く8~10年。そして薬剤の詰め替えが可能です。ちなみに業務用消火器を住宅用消火器として使用することは問題ないのでどちらを用意しても構いません。ただし、一般の家庭で扱いやすいのはやはり住宅用消火器でしょう。

2章:消火器の種類。粉末タイプと強化液タイプの違い

 住宅用消火器は、大きく分けて2つのタイプが販売されています。それが粉末タイプの消火器と強化液タイプの消火器です。それぞれABC火災の消火に対応していることがほとんどですが、それぞれが効果的とされている火災には少し違いがあります。
 まず粉末タイプの消火器は、即効性が高く広範囲の消火に向いているとされています。例えば、床にこぼれてしまった石油ストーブの灯油に火がつき燃え広がってしまった、などという場合にとても有効です。ただし、消火剤が粉末なので広範囲に飛び散り、使用後の掃除には手間がかかってしまいます。また粉末が飛び散ることによって視界が遮られてしまうことも欠点とされています。
 もう一方の強化液タイプの消火器は、粉末タイプに比べて冷却効果と浸透性に優れているのが特徴です。そのため、天ぷら油などが原因の火災や、布団や座布団など布類が火元の火災に効果を発揮するとされています。また消火剤が液体なので、飛び散りにくく使用後の掃除が比較的しやすいといいます。ただし強化液タイプは、粉末タイプの消火器よりも価格が高めなことが多いようです。
 粉末や液剤を放射できる時間は、消火器の大きさや種類によって異なりますが、住宅用消火器なら粉末消火器で15秒程度、強化液消火器で30~70秒程度です。強化液タイプは放射時間が長いので落ち着いて消火できるというメリットがありますが、素早く消火するには粉末タイプの方が優れているとされています。それぞれの特徴をまとめると以下になります。購入の際に参考にしてください。

●粉末系消火器

  • 即効性が高く広範囲の消化に向いている
  • 灯油など油脂類の火災の消火が得意
  • 広範囲に飛び散り後片づけが大変
  • 粉末によって視界が遮られることがある
  • 放射時間が比較的短く的確に狙う必要がある

●強化液系消火器

  • 冷却効果が高く浸透性があり再発火しにくい
  • 放射時間が長いので落ち着いて消火可能
  • 放射距離は粉末対応より長め
  • 後片づけが楽
  • 消化速度は粉末タイプに劣る
  • 価格が高め
 住宅用の消火器として、一般的なのは粉末タイプの消火器です。そして粉末タイプの消火器にも加圧式と蓄圧式の2種類があります。

3章:加圧式消火器と蓄圧式消火器

 加圧式と蓄圧式の消火器の仕組みの違いをご紹介します。
 まず加圧式は、内部に窒素ガスなどの入ったガスボンベが内蔵されていて、レバーを強く握ると、カッターでそのガスボンベを密閉している封板が破られます。するとガスが消火器内部に噴出し、消火器容器内部の圧力が高まり消火薬剤がノズルから放射されます。途中でストップできるタイプも一部ありますが、ボンベの薬剤の噴射を開始したら、途中で止めることができない場合が多いです。
 もう1つの蓄圧式は、消火器自体がボンベのようになっていて、内部には消火剤とともに窒素ガスなどが圧力をかけた状態で入っています。容器内部の圧力は圧力計によって確認可能で、消火剤の噴射を開始した後にも途中で止めることが可能です。
 住宅用の粉末タイプ消火器は、消火剤を再充填することのできない蓄圧式です。その理由は加圧式よりも破裂などのリスクが低い(加圧式でも正常なものなら破裂しません)からです。加圧式は高圧のガスボンベが容器の内部にあって、使用の際にはそのボンベに穴をあけてガス内にガスによる高い圧力を一気に容器内に加えます。その際、容器に腐食や傷などがあると、その圧力に耐えられずに破裂するというケースがあるのです。
 しかし、蓄圧式なら常に圧力が容器内部にかかっているので万が一容器に傷などがあれば、圧力がそこから徐々に抜けていきます。また内部の圧力を測る計器なども付属しているので圧力の異常をモニターすることもできます。そのため、突然破裂するという可能性はほとんどないのです。そのような特徴から住宅用消火器は蓄圧式となっています。

蓄圧式の業務用消火器。圧力計があるので圧力式であるのが一目でわかる。業務用消火器を住宅用消火器として設置しておくのは問題ない。ただし大型で目立つので置き場所を選ぶ。
業務用消火器は容器の色などに規制があるので赤が基本。容器のラベルにはABC火災に対応していることを示すマークがある。

4章:消火器の選び方

 自宅に用意しておくのに適した消火器としては、住宅用消火器、業務用消火器、スプレー式の簡易消火具の3種類があります。中でも、一般家庭用の消火器としては、やはり住宅用消火器が最も適しているでしょう。オススメなのは破裂事故の心配が少なく安全性の高い、粉末タイプの蓄圧式住宅用消火器です。住宅用なら容器のカラーリングも様々あり、部屋の中に設置しておいても業務用のように威圧感がありません。また、小型軽量で女性や高齢者にも扱いやすいというのも大きなメリットです。消火器としての構造や機能は基本的に業務用と同じですが、特に天ぷら油やストーブなど家庭で起きやすい火災に対応しています。
 購入の際は、必ず日本消防検定協会によって検査・認証されたものを選びましょう。住宅用消火器なら「国家検定合格証」シールが容器やラベルに貼られているので、このマークを確認してください。

こちらが国家検定の合格証。消火器を購入する際はこのマークを必ず確認する。消火器の容器の裏面などにシールが貼られている。
 気をつけなくてはいけないのが住宅用として販売されている消火器は、防火対象物に設置する義務のある消火器としては認められていないということ。オフィスなど消火器の設置が義務づけられている場所には住宅用ではなく、必ず業務用消火器を設置してください。
 逆に、消火機能に優れた業務用消火器を家庭用として設置することは問題ありません。家庭用として業務用消火器を使用する場合は、設置の義務がありませんので点検の義務もありません。しかし消火器には使用期限があります。点検がない分、自主的にチェックして定期的な交換は自分自身で行うようにしてください。
 消火器ではありませんが、スプレータイプの簡易消火具というものもあります。スプレー缶タイプで非常に小さく収納性に優れています。キッチンなど狭い場所でも邪魔にならないのですぐに取り出してとっさに初期消火ができるというメリットがあり、使い方も簡単で火元に向けて噴射するだけです。お子さんや高齢者でも簡単に扱うことが可能ですが、あくまでごく初期の消火に使用するもので本格的な消火器ほどの消火能力は期待できません。補助的な消火グッズとして住宅用消火器などと合わせて用意しておくのが良いでしょう。
 消火器の入手先としては身近なのはホームセンターです。住宅用消火器や本格的な業務用ABC消火器、さらにスプレー式の簡易消火具なども豊富に揃っており簡単に入手可能です。また、使用期限の過ぎた消火器なども店舗によっては新品購入と交換で引き取ってもらえることもあります。買い替えの予定があるならば引き取りが可能なのかどうか問い合わせてみてください。

5章:消火器の使い方と注意点

 消火器の使用期限や対応する火災の種類、使い方は容器のラベルに書かれています。また、放射時間や放射距離も必ず表示してありますので、いざというときに手間取らないように入手したらまずは確認しておきましょう。
 消火器は保管場所も重要です。物置やクローゼットの奥などはすぐに取り出せないのでオススメできません。家族全員が発見しやすく、また取り出しやすい場所に設置してください。
 例えば、玄関近くや階段付近、居間、キッチンなどです。注意しなくてはいけないのが消火器は保管場所によって寿命が変わってくること。湿気の多い場所や日の当たる場所を避け、なおかつ転倒しないように設置してください。 
 消火器の基本的な使い方は、まず燃えている物から3~5m程度の距離を取ります。さらに万が一消火できなかった場合を考えて、できるだけ出入り口を背にして、すぐに逃げられるように避難路を確保しておきます。
 そして消火器の黄色い安全栓(安全ピン)を上方に向かって強く引き抜いてください。これでレバーが握れるようになります。ホースを外して先端を火元に向け、ノズルをしっかりと握り放射の圧力でホースが振られないよう狙いを定めたらレバーを強く握ります。女性やお年寄りなど力が弱い方の場合は消火器の容器を下に置き、レバーの上から体重をかけるようにして押してください。そして手前からほうきで掃くように放射しながら消火します。
 火が弱くなってきたら火元に近づきながらさらに消火剤を放射し、火が消えたと思っても消化剤はすべて使い切ります。完全に火が消えるまで気を抜かないようにしてください。
 無事消火ができたら、消防署に連絡しましょう。消防職員が出向し、消火後の安全確認や、原因や損害額などの調査が行われます。火災損害保険請求の際に証明書が必要になることもあるので消防署には必ず連絡するようにしてください。

消火器を使用する際は、あわてずに黄色いピンを引き抜いてからしっかりレバーを握り込む。消火器が重い場合は床に容器を置き上からレバーを強く押す。
火元から3~5mほどの距離を置き、消火剤を放射する。火が完全に消えるように消火剤は一度に全量使い切るのが基本。

6章:消火器の使用期限と処分方法

 消火器には使用期限があります。住宅用消火器は検査の義務がないので自主的に期限をチェックし、使用期限が切れる前に買い替えましょう。半年ごとに点検の機会を設け、合わせて蓄圧式消火器の場合は圧力計のチェックも行います。蓄圧式消火器は十分な圧力がないと正常に消火剤を噴射することができません。メーターを見て、針が緑色の範囲に収まっているか確認します。

蓄圧式消火器は定期的に容器内の圧力が正常値にあるかチェックを行う。このように針が緑の範囲にあれば問題なし。
 住宅用消火器の使用期限は、おおむね5年となっています。本体の裏面などに使用有効期限が記載されておりこの使用期限を過ぎると正しく機能しない場合があります。早めに取り替えましょう。

たとえばこの消火器の使用期限は2029年。住宅用消火器には定期的な検査の義務がないので、各家庭で定期的に期限が切れていないかチェックする必要がある。
 使用期限内であっても、その消火器が高温、多湿の環境に保管されていたり、本体にサビやキズ、変形がある場合は使用の際に思わぬトラブルを引き起こす可能性があります。危険なので使用せず取り替えた方が良いでしょう。買い替えとなった場合、古くなった消火器は消火器リサイクル推進センターが指定する方法でリサイクル処分してください。処分は以下の3つの方法が利用できます。

①特定窓口に引き取り依頼をする

全国約5,200ヶ所にある消火器の販売代理店や防災・防犯事業者に依頼できます。お近くのリサイクル窓口は消火器リサイクル推進センターのWEBサイトより検索可能です。2010年1月以降に製造されている消火器は、消火器リサイクルシールつきで販売されていますが、リサイクルシールがついていない場合は、シール代とさらに引き取りの運搬費用がかかります。

②指定引き取り場所に持ち込む

特定窓口や指定引き取り場所に直接持ち込むことも可能です。指定引き取り場所は、消火器メーカー営業所や廃棄物処理業者が担当し、全国に約210ヶ所あります。こちらも消火器リサイクル推進センターのWEBサイトより検索可能です。持ち込みの場合でもリサイクルシールがついていない場合は別途シール代が必要です。

③ゆうパックによる回収依頼

薬剤量3kg以下または3L以下の消火器のみ対象ですが、電話での事前申し込みをすることでゆうパックによる回収を頼むことも可能です。申し込むと消火器発送用の専用箱が送付され、代引で運搬料金を支払います。運搬料金は全国一律2,200円です。リサイクルシールがついていない場合は別途シール代が必要です。
 そのほかの方法としては、消火器メーカーに処分方法を問い合わせてみても良いでしょう。料金はかかりますが、そちらでも引き取りをお願いできるはずです。また、ロイヤルホームセンターをはじめ、多くのホームセンターでも引き取りをお願いできるようです。その場合、消火器1本購入につき1本を無料で引き取るという形が多いようです。
 ただし、店舗によっては消火器の引き取り処分を受けつけていない場合もありますので、詳しくはお近くのホームセンターに問い合わせてみてください。

まとめ

 火災はいつ起きるかわかりません。万が一のことを考えれば一般の家庭でも消火器を用意しておくのが賢明でしょう。また消火器は入手しただけで満足するのではなく、定期的にチェックを行い使用期限切れなどにならないように注意してください。せっかく準備をしていてもいざというときに使用できないのでは意味がありません。
 さらに、その使い方に関しても予習しておき、全員が使用できるように家族で情報を共有しておきましょう。自治体や自治会の防災訓練に参加する機会があれば、積極的に参加し、消火器に実際に触れ初期消火の指導を受けておくと万全です。ただし、消火器があれば消火が必ずできるわけではありません。無理だと感じたら消火はプロにまかせ速やかに避難するようにしてください。

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