家具転倒防止突っ張り棒の選び方と正しい使用方法

 諸外国に比べると特に大きな地震の多い日本。いずれ巨大な地震が首都圏にも訪れるという予測もされていますから、最悪の被害から逃れるため私たちも日ごろから個人レベルで地震対策を実行しておかなくてはいけません。住宅や建築物の耐震化は当然として、合わせて行っておくべきなのが家具の転倒リスクへの対処です。
 過去の震災でも家具や大型家電の下敷きになり大ケガを負ってしまったというケースが多々ありました。屋内に転倒の可能性がある大型の家具がある場合は、地震の揺れでも転倒しないようにあらかじめ対策しておくべきです。そんな家具の転倒防止に非常に有効とされている代表的なものが『家具転倒防止突っ張り棒』です。伸縮式のシンプルな突っ張り棒ですが、これを使用することで屋内の安全性は大幅に高まります。
 ただし、正しく使用しないとその効果は発揮されません。そんな家具転倒防止突っ張り棒について、正しい選び方と使用方法などを詳しくご紹介します。

1章:転倒防止突っ張り棒とは
2章:地震時の家具、家電の転倒リスク
3章:転倒防止突っ張り棒はどれぐらいの震度に耐えられる?
4章:転倒防止突っ張り棒の選び方
5章:転倒防止突っ張り棒の正しい使い方
まとめ

1章:転倒防止突っ張り棒とは

 家具転倒防止突っ張り棒(家具転倒防止伸縮棒)は、その名の通り、DIYなどでもおなじみの突っ張り棒タイプの家具転倒防止器具で、家具や家電などを伸縮可能なパイプ状のポールで支えるというものです。伸縮式のポールの両端に壁や家具と接触するベースが取りつけられており、横から見るとHの文字のような形をしています。収納グッズとして使用される突っ張りポールと基本的な構造は同じで、プラスチックや金属などのパイプの中にひと回り細いパイプが内蔵されており、天井と転倒を防ぎたい対象の間の空間に、パイプを外に向けて突っ張るようにテンションをかけながら取りつけるというもの。
 長さの調節も簡単に行え、家具と天井の間にこの突っ張り棒を取りつけることで、地震などで家具が転倒しないように支えることが可能で、長さやパイプの太さなどのバリエーションも豊富。様々なスペースに合うものが販売されています。長さを調節しスプリングのテンションのみで支える、比較的軽い家具や家電などに使用する簡易的なものから、長さ調節後、パイプに対して垂直に取りつけられたネジを食い込ませることでしっかりと固定できるものなどもあります。
外側に向かってスプリングのテンションがかかっている突っ張り棒タイプの家具転倒防止器具が『家具転倒防止突っ張り棒』。長さやパイプの太さなどのバリエーションも豊富に揃っている。
スプリングのテンションではなく、ネジを回転させ、パイプの外側に圧をかけて固定するタイプもある。
家具転倒防止突っ張り棒は2本で使用するのが基本なので、このような2本セットとなったものがオススメ。

2章:地震時の家具、家電の転倒リスク

 地震発生時の揺れによって家具が転倒するとどれほど危険なのでしょうか。過去に起きた阪神淡路大震災では大型家具や家電製品の下敷きとなって多くの方が亡くなってしまったり大ケガを負ったとされています。これは阪神大震災の発生が早朝で、就寝中の無防備な状態で下敷きになってしまったケースが多かったためのようです。
 家具や家電は思いのほか重量があり、大きなキャビネットなどなら80kg以上。さらに家電でも、冷蔵庫のような大型のものなら100kgを超えるものも珍しくありません。そのような重量物が地震の揺れで頭の上に勢いよく倒れかかってくれば、当然ですが無事では済まないでしょう。
 また、家具の下敷きにならなくても、転倒した家具に取りつけられたガラス戸や中の食器類が割れケガを負ってしまうことも考えられます。さらに、倒れた家具や家電が避難路をふさいでしまうという可能性もあります。家具転倒によるリスクはこのように非常に大きいのです。加えて、倒れた家具のせいで、用意していた防災グッズが取り出せなくなる、ということもあるかもしれません。直接的な被害ではなくても二次的な被害につながる可能性もあるのです。
 地震は人間の都合を考えて発生するわけではありません。最悪のケースに備えてまずは寝室として使っている部屋の家具転倒対策が急務といえるでしょう。まず、倒れる可能性のある家具や家電が周囲にないか確認してください。転倒の危険がある家具からはできれば距離を取りベッドなどの配置を検討しましょう。もし部屋のスペースに余裕がなく、ベッドの移動は難しいというのなら転倒防止器具などの導入をすぐに検討してください。
 より確実なのは頑丈なL字型金具とボルトなどで直接家具を壁や柱に固定してしまうという方法です。この方法なら確実に強度が期待できますし安心です。ただし、ネックは家具や壁に傷をつけてしまうこと。大切な家具に穴をあけるのは避けたいですし、賃貸では柱にネジを打つのも難しいでしょう。その場合には家具や天井に傷をつけない対策として、家具転倒防止突っ張り棒を使用するのがオススメです。
 突っ張り棒タイプの器具ならねじ止めなども必要ないので、壁や天井、家具そのものに傷をつけることもありません。また適切な方法で使用すれば十分な転倒防止効果が期待できます。

3章:転倒防止突っ張り棒はどれぐらいの震度に耐えられる?

 家具転倒防止突っ張り棒などの家具転倒防止グッズはどれくらいの揺れまで耐えることができるのでしょうか。製品によっては、パッケージなどに耐圧○○Kgなどという表記のほかに、「震度○○相当に対応」などと書かれているものもあります。ちなみにこの耐圧性能というのは押しつける力にどれくらいまで耐えられるかを数値化したもの。単純にこの数値が大きければそれだけその家具転倒防止突っ張り棒が頑丈ということになります。
 ただし、これは縦方向の圧に対しての強さを表したものなので数値が大きければ家具が倒れにくくなるわけではありません。縦方向に力が加わったとき、その家具転倒防止突っ張り棒が破壊されることなく耐えられる強度ということです。
 また、耐震性能の表記に関してもこれはJISなどによる明確な規格で検査されているものではないということも理解しておきましょう。あくまでメーカー独自の実証実験、もしくは外部機関によって個別に確認しているものです。そのため、表記されている震度の揺れに絶対に耐えられるということを保証したものではないので、あくまで、目安と考えておいた方が良いでしょう。ただし、製品の比較の参考になるので購入の際にはチェックしておくべきです。
 そして、中にはそういった性能表記の一切ない製品などもあります。対応震度の表記がないから揺れに弱い、ということはありませんが、震度○○相当に対応などとうたわれていて、なおかつ具体的な実証実験の内容や実験を行った外部機関などが記載されているものの方が、転倒防止効果も期待できます。なぜならその製品に関してはメーカーサイドで耐震実験がされているということだからです。購入の際はこういったポイントにも注目しましょう。
 また、家具転倒防止突っ張り棒は使用する環境、家具や天井の強度、地震の揺れ方によっては表記された対応震度よりも小さな揺れで家具が倒れてしまうこともあり得ます。万が一のことを考え、別の耐震グッズも導入し、複数を組み合わせて使用するのがベストです。
耐震度性能について明確な規格はないが、このように公的機関によってその効果が実証されている転倒防止突っ張り棒もある。

4章:転倒防止突っ張り棒の選び方

 転倒防止突っ張り棒を使用する上でまずチェックすべきなのは取りつける家具の上面から天井面までの高さです。この距離が離れすぎている場合は、取りつけられたとしても家具の転倒防止効果が期待できません。では、どれくらいの距離なら良いのでしょうか? 転倒防止突っ張り棒のサイズはだいたい長いものでも最大で1m程度(それ以上に伸びるものもあります)となっています。
 ただし、この1mというのは大型のものをいっぱいに伸ばしたときのサイズ。伸縮式のポールを最大に伸ばせば中のポールと外のポールの接触部分が減り、当然強度は落ちてしまいます。そのため最大まで伸ばして使用するのはできれば避けるべきです。大型のものを使用したとしてもせいぜい70cm程度までに抑えた方が良いでしょう。それ以上に距離が離れている場合は、転倒防止突っ張り棒ではなく、L字金具やベルト式の転倒防止グッズで柱などに直接固定するなど別の方法を検討した方が安心です。
 さらに、家具や家電の重さも重要です。一般的な成人男性の身長を超える洋タンスや本棚の場合で、80~100kg(収納されているものや量によって変わります)ほど。さらに高さ170cmくらいの冷蔵庫なら100~120kgくらいになります。このような重量のあるものを転倒防止突っ張り棒で支える場合は、十分な耐圧性能が必要です。
 転倒防止突っ張り棒には、内蔵されたスプリングのテンションだけで揺れに耐える簡易的なものから、パンタグラフ構造を持つジャッキタイプのもの、ボルトを使い天井と家具の天板にがっちりと固定する強度の高いものまで様々な種類がありますがその強度の目安となるのが耐圧性能です。製品のパッケージには多くの場合『耐圧○○kg』などという表記がなされていて、前述したようにこの数字が大きいほど縦方向に加わる力に対して高い強度が期待できるということになります。前述したような重い家具や家電を支えるには最低でも耐圧200kg、できればそれ以上のスペックを持ったものを選ぶべきでしょう。
 さらに、転倒防止突っ張り棒は縦方向の力には比較的強いのですが、天井や天板に接する部分の面積が小さいと、摩擦力が少なくなり地震の横揺れなどの力で外れやすくなるということも覚えておきましょう。接触面積が少ない場合は木の板などを挟み、接触面積を確保して力を分散させるか、別の転倒防止グッズを使用することを検討した方が賢明です。
家具転倒防止突っ張り棒のパッケージにはこのように耐圧性能などが記載されている。
突っ張り棒タイプの転倒防止器具を重い家具や家電に使用する場合は耐圧200kg以上のものを使用する。
家具の転倒防止に最も効果的とされているのがL字型金具。家具と壁や柱を金具で直接固定するというもの。ただし壁や柱に十分な強度がないと地震によって破壊されてしまうこともある。
ベルトタイプの家具転倒防止器具。転倒防止効果は高いが直接ネジ止めするので家具や壁などにキズがついてしまうのがネック。

5章:転倒防止突っ張り棒の正しい使い方

 転倒防止突っ張り棒の取りつけは難しくありません。ただし、正しい方法で取りつけないと本来の効果が期待できないので注意が必要です。まず、注意するべきなのが取りつけ方向と位置です。転倒防止突っ張り棒のベース部分の接触面は多くの場合長方形になっています。その長方形部分の長辺が家具の天板部分の長辺方向に対して直角になるように設置してください。平行にした場合、家具が前後方向に動いた際に外れやすくなってしまいます。
 また、必ず天板と天井に対してポール部分が垂直になるように取りつけてください。曲がって取りつけると本来の突っ張る効果が発揮できず家具は簡単に倒れてしまいます。
 そして転倒防止突っ張り棒の設置位置は側板と交わることで強度が高くなっている家具天板の両端です。さらに、家具に奥行きがある場合は、なるべく奥の方に設置しましょう。これは、壁を背にした家具が地震の揺れで手前側に転倒した場合に、家具の奥の方が持ち上がることになるので、奥側をしっかりと支えるためです。
 また、必ず2本セットで使用してください。1本だけだと力が集中し左右にバランスが崩れ家具が倒れやすくなってしまいます。さらに地震の衝撃で家具の天板、もしくは天井を突き破ってしまう可能性もあります。
 2本以上の場合なら左右均等にバランスが取れるように偶数本で取りつけるようにしてください。そして家具の天板部分や、天井の強度が不足している場合は別途補強用の板などを使用して転倒防止突っ張り棒を取りつけます。天井側に使用する板は家具より幅の大きいものを使用してください。こうすることで天井や天板にかかる力を分散することができ強度が確保できます。
 さらに転倒防止突っ張り棒に合わせて、家具の底部分に敷くタイプのストッパー型転倒防止器具を使用するとさらに効果的です。家具が地震によって前後に大きく揺れると床側にも大きな力が加わります。万全の転倒防止策としてセットで使用するのがオススメです。転倒防止突っ張り棒を取りつける際に気をつけるべきポイントをまとめると以下のようになります。

  1. 突っ張り棒の足の向きは家具の長辺に対して直角に
  2. ポール部分が曲がらないように垂直に立てる
  3. 取りつける位置は家具の両端の側板部
  4. できる限り奥の壁側に設置する
  5. 1本だけでなく必ず2本セットで支える
  6. 天井に強度がない場合はあて板などを挟んで力を分散する
  7. ストッパー式転倒防止器具を併用するとさらに効果的
転倒防止突っ張り棒は、家具に対してこのような位置に取りつける。天井の強度が足りない場合は家具の天板よりも少し広い幅の補強用の板を使用する。
家具の床と接する部分の前側に設置するストッパー式転倒防止器具。横から見るとくさび型をしており家具が移動したり前方に倒れるのを防いでくれる。
マットタイプの家具転倒防止器具。家具の底、前側に差し込んで使用する。くさび型をしており家具が前方に倒れるのを防ぐ。転倒防止突っ張り棒と併用すると効果的。
 住宅の天井は持ち上げる方向の強度に関してはあまり強くないとされています。もし、補強用の板を使用しても、天井の強度に不安があるという場合は、別の転倒防止器具を使用するか、転倒防止突っ張り棒と併用してL字型金具やストッパー式器具を使うと安心です。

まとめ

 日本は、これまでに数々の大きな地震を経験し、そして大きな被害を受けてきました。そのため一般の家庭においても、家具や家電の転倒防止策の重要性が浸透しており、各種転倒防止器具の利用が進んでいます。しかし、そのような転倒防止器具が効果的に使えているかどうかはまた別です。
 特に、突っ張り棒タイプの転倒防止器具は、手軽に使用できることから多くの家庭で使用されていますが、間違った使い方をしているケースも少なくありません。ここで紹介した正しい取りつけ方のポイントをチェックし、きちんと使えているかどうか一度見直してみてください。
 さらに、転倒防止突っ張り棒を取りつけているから大丈夫と油断せず、L字金具や家具の下に設置するくさび型のプレート、ストッパー型の転倒防止器具を併用して、万全な対策を施すようにしましょう。いくつものグッズを設置するのは手間がかかりますが、大きな地震はいつ発生するかわかりません。いざというときに「あのときにやっておけば…」などという後悔をしないよう、万全の対策を行っておきましょう。

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