やすりの種類と使い方

 木材や金属材料の細部の研磨や、切削面のエッジを整えるなどという繊細な作業には、手動の工具である金属やすり(棒やすり)がとても便利です。
 木工用やすりに各種金工用やすり、プラスチック用やすりや、あらゆる材料に使用できる万能やすりなど、その種類はとても豊富で、加工する素材に合ったやすりを使えば、作業もはかどり、仕上がりも満足いくものになるはずです。
 そんなDIYにも重宝するやすりについて、形や目の違い、対応する素材や使い方などについてご紹介します。

目次
1章:やすりとは
2章:金属やすりの種類と用途
3章:やすりの目の違い
4章:やすりの使い方
5章:やすりの選び方

1章:やすりとは

 金属や木材などの細かな部分を研削、研磨するための手動工具が鑢(やすり)です。
 DIYなどで使用するやすりには、紙やすり(サンドペーパー)などもありますが、細かな切削や、材料を大きく削る際には金属やすり(棒やすり)の方が適しています。

 金属やすりは、鉄などの金属の表面にいくつもの細かな刃がついた工具で、この刃を加工対象に押し付けてこすることで素材の角や表面を滑らかにしたり、不要な部分を削り落としたりできます。またサビ落としなどにも便利です。

 この金属やすりには様々な種類や形状があり、また刃の種類や、その目の粗さも豊富です。主に用途によって木工やすり、鉄工やすり、ダイヤモンドやすりなどに分かれていますがそれ以外にもプラスチック用や、のこぎりなどの刃の目立て用などもあります。

 金属の棒やプレートの表面に、溝やデコボコの刃が刻まれた金属やすりの見た目は、どれも一見同じように見えますが、加工対象となる素材によって違いがあり、またどのような加工や仕上がりにしたいかによっても、使用するやすりが変わってきます。その違いを見極め、うまく使い分けることが上手な加工や仕上げをするためのポイントになります。

2章:金属やすりの種類と用途

 金属やすりは大きく以下の3タイプに分かれます。また、これらに加えて、小さな工作物を仕上げるための複数の形の金属やすりがセットになった組やすりや、アクセサリーの仕上げに使用する精密やすりなどもあります。
 ここでは代表的な鉄工用やすりと木工用やすりの違いや、それぞれの特徴は以下になります。

鉄工用やすり

 鉄工用やすりはその名の通り、鉄やステンレス、アルミなど金属材料の切削や研磨、彫金、金工などに使用するやすりです。主に金属を手作業で仕上げるときに使用します。
 金属用やすりは形(断面形状)にも多くの種類があります。主に、平形、半丸形、丸形、角形、三角形の5種類があり、さらに楕円形のものもあります。
 平は、最も一般的な形で汎用性が高く様々な加工に使用できます。面出しに便利なやすりです。
 かまぼこ型の半丸は、曲面の仕上げに適しています。特に滑らかな曲線の仕上げには丸よりも使いやすいでしょう。
 円錐型の丸型は穴のバリ取りや円形の材料の仕上げ、曲面の加工などに適しています。また筒状のものの内面の磨きなどにも使いやすいでしょう。
 角は四角錐形の断面形状になっています。角部分を使って、面を出す加工などに適しています。また、溝の隅などの仕上げにも便利です。
 三角は三角錐型の断面形状を持っていて、角やすりよりも鋭角な部分の加工や仕上げに適しています。

木工用やすり

 木工用やすりは、木材などの粗削りから、細かな部分の仕上げまで行える金属製のやすりです。金属材料に比べて木工材料は軟らかいため、目の細かい鉄工用のやすりではやすりの目詰りがしやすく、削る速度も遅くなってしまいます。そのため木材や石膏ボードの荒削りなどには、専用の木工用やすりの方が適しています。
 逆に木工用のやすりで硬い金属材料を加工すると、上手く削れない上に刃がダメージを受けてしまいます。もし両方の材料に使用したいという場合は、金属と木材双方に対応した万能やすりなどを使用するのが良いでしょう。
 木工用やすりの目は、粗目や中目など目の粗さだけでなく、目の切り方によっていくつかの種類があります。その違いは次の章で紹介します。

ダイヤモンドやすり

 ダイヤモンドやすりは、特殊金属のニッケルなどを用いたメッキ法によって、非常に硬い人工ダイヤモンドでできた砥粒をやすり表面に結合したものです。そのため、ダイヤモンドヤスリの目は金属に刻まれた刃はなく、砥粒の粒径の大きさによって粗さが変えられています。
 ダイヤモンドの砥粒はやすりの台金にとても強固に保持されているため、使用していても切れ味が落ちにくいのが特徴となっています。ダイヤモンドの砥粒の密度を高くすることで、強力な研削力を得ることができ、通常の鉄工用やすりでは削るのが困難な、超硬合金や焼入鋼、セラミックスやガラス、さらに強化プラスチックなどの硬質材などまで、研削加工することが可能です。
 しかし、硬いものの加工に適したダイヤモンドやすりは、木材など柔らかな材料の加工には適していません。切れ味が良くても、少しずつしか削れないので、荒削りはできず、また柔らかい素材を削ってしまうと、目がすぐに詰まってしまいます。そのため、金属でも比較的やわらかい軟鉄やアルミなどにも適していません。
 ダイヤモンドやすりを使用する際は材料に軽く当てる程度で十分な切削が可能です。また、少量のオイル(切削油)などを付けるとスムーズに作業することができます。あまり強い力で研削すると砥粒が剥がれてしまうので、力をあまり入れずに使ってください。

万能やすり

 万能やすりは金属の加工から、木材の加工まで、様々なシーンで活用できる、名前の通り万能なやすりです。特殊な目によって、木材でもアルミでも目詰まりを防ぎます。さらに、柔らかく粘りけのある樹脂などの素材の切削も可能なタイプなどもあります。
 ただし、金属用、木工用などのように対象となる素材に最適化されたものではないので、作業性や仕上がりに関しては専用のものにはかないません。しかし、いくつものやすりを揃えなくても良いのでDIYなどには非常に重宝します。
 ただし、万能やすりといっても商品によって対応する素材に違いもあるので、購入の際はパッケージなどでよく確認してください。

3章:やすりの目の違い

目の粗さの違い

 やすりの表面には、無数の突起をもった刃があります。これが「目」と呼ばれるもの。この目の大きさ(粗さ)はサンドペーパーのように番号ではなく、粗目、中目(ちゅうめ)、 細目(さいめ)、油目(あぶらめ)というような名称で大きく分けられており、この順番で目が細かくなっています。
 この目が粗いほど一度にたくさん削ることができ、目が細かいほど、削り跡がキレイに仕上がります。
 ただし、同じ目であっても、やすりの長さによって密度は変わってきます。例えば同じ中目のやすりでも100mmのものの目の数は25㎜あたり45本なのに対して、200mmの目の数は25㎜あたり36本と、一定の長さにおける目の数(25mmの間に切られている目数)が異なるのです。
 つまり、長いものほど同じ中目でも目が粗くなっているということ。これは、やすりが長いほど削る対象に刃が触れる時間が長くなるので、長くても短くても同じような削れ方になるように密度が変えられているのです。
 長さによって刃の密度が異なって見えても、商品に表記されている粗目、中目、細目などを基準に選べば基本的に削れ方に違いがないので問題はないでしょう。
 そして、この目の大きさを作業別に分けると、粗削りには粗目を使用し、仕上げや一般の精密仕上げには中目や細目、油目が適しています。
 粗目のやすりから始め、順次やすりがけをしていき、中目→細目と順番に仕上げると、削り跡が残らずキレイな仕上がりとなります。

目の切り方の違い

 目は粗さだけでなく、その目の切り方(刃の形状)によってもいくつかの種類があります。それが単目(筋目)、複目(あや目)、波目(フライス削り目)、鬼目(石目、わさび目)、シャリ目などです。それらの違いと特徴は以下のようになります。

単目

単目やすりは目が65~85°の角度に一方向にのみ切られています。切削跡がキレイなので、金属面の仕上げの際に使用します。主に金工やすりに使用されています。

複目

複目やすりは、一般に上目が 70~80°、 下目が 45°斜め交叉状に目が切られています。上目が切削を行い、下目は切屑の排出作用を担っています。

仕上がりは単目ほどキレイではありませんが、切削能力に優れており、スピーディな作業が行えます。またもっとも一般的な目であり様々な素材用のやすりで使用されています。

波目

 波目は、やすりの目が円弧状の波形に切ってあります。目のピッチが粗く、目詰まりが起こりにくいので塗料の剥がしなどに適しており、また石膏ボードや、銅、アルミなどの柔らかい金属を削るのにも向いています。削り跡は比較的キレイに仕上がります。主に金工やすりに使用されています。

鬼目

木工用の荒削りに使用されるのが鬼目やすりです。やすりの目がおろし金のような鋭い三角形の山形になっており、一度に多くの量を削り取ることができます。木材ほか石膏ボードなど柔らかい材料を削るのに適しています。しかし、摩耗が早く、仕上げ面が粗くなります。主に木工やすりに使用されています。

シャリ目

 シャリ目は複目よりも粗いですが、鬼目よりは細かく、木材や石膏ボードを効率よく削ることができます。削り跡がやや粗い仕上がりになります。主に木工やすりに使用されています。

4章:やすりの使い方

 やすりの目(刃)は削るものに対して押し込むことで削れるようにできています。そのため手前に引いても削ることはできません。つまり、力を入れてゴシゴシとやすりを往復させても、実際には引いているときには削れておらず、単にやすりの目が詰まってしまったり、やすりの寿命を縮めるだけでまったく意味がありません。押し込む方向に動かすときだけ力を入れるようにしましょう。
作業の際は、削る材料を万力やクランプでしっかりと作業台などに固定してください。加工物が動いたり、振動しないようにきちんと固定できていれば確実でスムーズな作業が行えます。

ただし、小さな部品や、柔らかな素材の仕上げであれば、材料を固定せずに作業をしてもかまいません。

5章:やすりの選び方

 やすりを選ぶ際は、金属や木材、またはプラスチックなど、どのような素材に対して、どれくらいの作業を行うのかによって適したものを選びましょう。金属の加工には金工やすり、木材や石膏ボードの加工には木工やすりなどを選ぶのがベストです。
 万能やすりであれば、金属、木材にかかわらず様々な素材に使用可能ですが、材料に対してやすりがけの頻度が多くなるのであれば、それぞれ専用のものを、粗目、中目、細目と3種ほど揃えておいた方が良いでしょう。その方が作業の効率が確実に上がり、仕上がりもより美しくなるはずです。
 やすりは使用に伴い、刃に削りくずが詰まっていきますのでクリーニング用の真ちゅうブラシや歯ブラシなども用意しておきましょう。作業効率も上がり、やすりの摩耗も減るはずです。
DIY用に一度にたくさんの金属やすりを揃えるのが大変ならば、まずは粗目を揃えるのがオススメです。粗目やすりならば、スピーディに効率よく形を整えることができます。切断面のバリ取りなどはサンドペーパーでも十分です。

粗目やすりで思い通りの形状にざっくりと削った後に、紙やすりなどで補正や仕上げをすれば良いでしょう。
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