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シンナーの種類とその扱い方
シンナーの種類とその扱い方
油性のペンキやラッカー系の塗料の塗装作業に欠かせないものといえば、塗料とシンナーです。塗料は使用する部位や素材、目的に合わせて使い分けるのが上手く仕上げるコツですが、その粘度が高すぎる場合はシンナーで希釈することも欠かせません。さらに塗装後のハケやローラー、バケットの洗浄にもシンナーはなくてはなりません。そんなシンナーについて、その種類の違いや扱い方の注意点、処分方法など、塗装作業前に知っておくべきことをご紹介します。
目次
1章:シンナーとは
2章:シンナーの種類
3章:シンナーの正しい使い方と使用する際の注意点
4章:使い終わったシンナーの処分方法
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1章:シンナーとは
シンナーは特定の薬品の名称ではありません。様々な溶媒を混合した溶剤で、その中には人体に悪影響を与えるベンゼンやトルエンなども含まれています。シンナーは英語では(paint thinner・ペイントシンナー)と言います。この英語の thin は「薄める」を意味する言葉で、ペイントシンナーとはそのまま「塗料を薄めるもの」という意味になります。つまり様々な種類の塗料を薄めるための有機溶剤がシンナーということ。そして日本語ではうすめ液となります。つまりシンナーとうすめ液は基本的には同じものというわけです。
塗料の希釈用のシンナーとしては、現在は有機溶剤が主に使用されていますが、以前は、まつ科の植物の樹脂を蒸留して作られた揮発性の油、テレビン油が使われていました。しかし、現在はよりコストのかからない炭化水素溶剤に変わっています。
シンナーを塗料に混ぜると、塗料の有機成分などがシンナーの溶剤によって溶解され塗料が薄まります。そして適切な粘度に希釈されることで塗料が塗りやすくなります。
通常市販の塗料やペンキは適度な粘度に調整されているので、わざわざ希釈する必要はほとんどありません。しかし、温度や湿度によっては塗料が適切な濃度とならない場合があります。そんなときにシンナーで適度な濃度に希釈すると、粘度が下がり、また塗料の蒸発量もコントロールされ、キレイな塗装の表面に仕上げることが可能となるのです。
もし粘度の高すぎる塗料を、そのまま使用してしまうと、ハケ跡やローラー跡がそのまま残ってしまうことがあり、仕上がりが格段に悪くなってしまいます。
ただし、希釈は慎重に行わなければなりません。適切な割合で希釈をしないと、塗料が薄まりすぎ、塗ったそばからたれてきてしまったり、塗膜が薄くなり下地の色が透け、隠蔽力が落ちてしまうことも。希釈の際は、少しずつ混ぜ、よく攪拌し、繰り返し試し塗りなどをして薄めすぎていないか確認しながら進めていくことが大切です。
また、シンナーは、塗料を溶解することができるので、塗料がついてしまったハケなどの洗浄や、はみ出してしまった塗料を落とす際にも使われます。
ただし、塗料の種類によってシンナーにもいくつかの種類があります。例えば一般的な油性塗料用と、ラッカー系塗料用では必ず使い分けなくてはいけません。混ぜて使ってしまうと問題が起きるからです。ではシンナーの代表的なものにはどのような種類があるのか。また違いは何なのか次のパートでご紹介します。
2章:シンナーの種類
シンナーを大きく分けると、油性塗料用のペイントシンナーと、ラッカー系塗料を薄めるために使用するラッカーシンナーに分かれます。水性塗料の場合は、通常水で希釈するのでシンナーは使用しません。
ペイントシンナーは、主成分が脂肪族炭化水素などで、油性系の塗料を主に希釈するために使用します。市販されている商品ではシンナーとは呼ばれず、多くの場合「ペイントうすめ液」などと呼ばれています。いわゆるシンナー臭ではなく灯油のような臭いがします。
油性塗料用のペイントうすめ液(シンナー)
テレピン油の入った高級ペイントうすめ液(シンナー)
ラッカーシンナーは芳香族炭酸水素やアルコールを主成分としており、ラッカー系の塗料を薄めるために使用するシンナーです。油性塗料用のペイントシンナーよりも溶解力が強く、乾燥が速いという特徴があり、特有の臭気、いわゆるシンナー臭があります。
ラッカー塗料用のラッカーシンナー
鉄のサビ止め、亜鉛メッキのサビ止め補修用の塗料ローバルシリーズ用専用シンナー
双方ともシンナー(うすめ液)ですが、使用する塗料に合ったものを使わなくてはなりません。もし間違ったものを使用するとどうなるのでしょうか。例えばラッカー塗料を油性塗料用のペイントシンナーで希釈しようとすると、溶解力が足りずうまく溶かすことができません。それだけでなく、塗料がゲル状の固まりになって使用できなくなってしまうでしょう。
逆に油性の塗料をラッカーシンナーで希釈しようとすると、見た目には変化はあまりありませんが、塗装した際に塗装面の素材や古い塗膜を侵してしまう場合があります。このように正しい組み合わせで使用しないと、塗料をダメにしてしまうことがあるのです。必ずそれぞれに合ったシンナーで希釈するようにしましょう。
また、ウレタン樹脂塗料や、エポキシ樹脂塗料、アクリル樹脂塗料など合成樹脂塗料には、それぞれの塗料に適したウレタンシンナーやエポキシシンナー、アクリルシンナーなど専用のシンナーがあります。塗料に使用されている樹脂に適したシンナーを使わないと、同じように塗りにくくなってしまったり、塗料が分離して、固まってしまったりすることがあるのでこちらも十分注意してください。使用する塗料と同じメーカーの同じシリーズとして用意されているシンナー、もしくはうすめ液を使用するのが最も間違いないでしょう。
3章:シンナーの正しい使い方と使用する際の注意点
油性の塗料やラッカー系塗料の希釈に欠かせないシンナーですが、シンナーには化学物質である有機溶剤が使用されています。この有機溶剤の成分にはトルエンや、酢酸エステル類、アルコール類などの混合溶剤が用いられていることがあります。
これらを吸い込んでしまうと人体に悪影響を及ぼすことがあります。中枢神経麻痺作用で麻酔薬を吸入したような症状を起こしてしまったり、大量に吸い込めば軽い頭痛やめまいなどの中毒症状を起こすことも。そうならないように、うすめ液の使用時には、塗装用マスクを着用するなど、十分に注意してください。
塗料の希釈や、ハケなどの洗浄作業は必ず換気の良い屋外で行いましょう。また、有害な有機成分は皮膚を通じても人体に取り込まれてしまうことがあります。皮膚に直接シンナーが触れないように手にはビニール手袋を装着してください。
さらに、塗装用のマスクも装着し揮発した有機溶剤を吸い込まないように注意しましょう。塗料の希釈方法とシンナーを使ったハケの洗浄方法は以下になります。
有機溶剤を吸い込まないようにシンナーを使用した作業を行う場合は防毒マスクを使用しましょう。
皮膚に直接シンナーが触れると炎症などを起こすことがあるのでシンナーを扱う際は塗装作業用のポリエチレン手袋の装着をしてください。
●塗料の希釈方法
塗料をシンナーで希釈する場合は気温などに注意してください。通常、塗料の希釈の割合(希釈率)は、5~10%ほどの幅をもって設定されていますが、夏場など気温が高い場合、塗料は一般的に粘度が低くサラサラとしていますので希釈の割合は少なめにします。
逆に気温の低くなる冬場は塗料の粘度が高くドロッとした状態になるので高温時よりも少し薄めに希釈しないと、塗料の伸びが悪くなり塗りにくくなってしまう場合があります。気温の違いに合わせて、粘度を適切に調整しましょう。
希釈する際は、まずペンキ缶や塗料の容器から一旦別の容器に塗料を取り分けます。例えば、1kg(1000cc)の塗料に対して、1/4カップ(50cc)のシンナーを入れると、5%の希釈となります。双方を容器に入れたら攪拌棒を使いよく混ぜましょう。しっかりと攪拌しないと塗料の色の元である有機成分や樹脂が溶けません。
しっかり混ざったら、必要な分だけバケツやローラーバケットなど別の容器に取り、塗装前に試し塗りをします。しっかりと塗料が伸び、隠ぺい性にも問題がなければ塗装を開始します。
注意しなくてはいけないのが、希釈してはいけない塗料もあるということです。すでに粘度調整ができていて、希釈をせずに使用することが前提の塗料もあります。商品の注意書きなどをよく確認してみてください。「無希釈」や「希釈せずにお使いください。」といった表記があるものは、基本的には希釈せずに使用してください。
●シンナーを使ったハケの洗浄方法
油性塗料での塗装作業終了後、使い終えたハケやバケツなどを洗浄する際にもシンナーを使用します。その方法は以下になります。
①塗料をこすり取る
まずはヘラなどでしごきます。できるだけ塗料を絞り取ってから、残ったものを新聞紙などに塗りつけて、塗料がつかなくなるまでこすり取ります。
②ペイントシンナーを容器に取る
ある程度ハケがキレイになったら、シンナーが直接皮膚に付着しないように、ビニール手袋をし、容器にハケが浸かるほどのペイントシンナーを入れます。
③ハケを洗う
ハケにシンナーを浸し、バケツの中で、ゴシゴシと洗います。
④塗料とシンナーを新聞紙で吸い取る
ある程度洗ったら、ハケにシンナーを吸わせた状態で、新聞紙などにこすりつけて塗料とシンナーを吸い取らせます。これは3~4回ほど繰り返しましょう。
⑤ハケを拭く
十分キレイになったらウエスなどでハケを拭きます。
⑥水洗いと陰干しで終了
最後に食器用の洗剤で洗い、水洗いした後に毛先を整え、陰干しすれば終了です。
洗浄に使用するシンナーとして、希釈用のペイントシンナーではなく、ハケ洗い用のシンナーを使用するのもオススメです。
ハケ洗い用のシンナーは、溶剤に加え界面活性剤が入っておりペイントシンナーよりも少ない量で効果的に洗浄することが可能です。また乾燥後のごわつきも抑えられます。使い方は前述したペイントシンナーを使った洗浄と基本的には同じです。またローラーバケやコテバケなどの洗浄にも使用可能です。
ラッカー系塗料を使用したハケの洗浄にはラッカーシンナーを使用します。洗浄方法はペイントシンナーと変わりません。ただし、ラッカーシンナーは人体への影響も大きく、引火性も高いので、火気と換気には十分に注意してください。
燃えやすい物が近くにあると着火することもあるので、作業は必ず屋外で行い、さらに、風上に身を置いて作業するようにしてください。
4章:使い終わったシンナーの処分方法
ハケの洗浄に使用したシンナーは、排水口などに流してはいけません。排水を汚染してしまうだけでなく有機溶剤が排水パイプにダメージを与えてしまう可能性があります。オススメの処分方法は、新聞紙や布に染み込ませて普通ゴミとして捨てるという方法です。
やり方は、まず二重にしたゴミ袋などにちぎった古新聞や、ぼろ布などを入れます。そしてその新聞紙やぼろ布にシンナーを染み込ませます。シンナーがビニール袋を侵さないように新聞紙やぼろ布は十分に用意しておきましょう。
全てのシンナーを染み込ませることができたら、袋の口を開けた状態にして、風通しの良い屋外にいったん置いてしっかり乾かして溶剤を揮発させましょう。シンナーが完全に揮発したら、ゴミ袋の口を閉じ、そのまま普通ゴミとして処分してください。
なお、地域によってはこういった処分方法が認められていない場合もあります。お住まいの自治体に確認してみてください。
他の処分方法として、油性塗料やシンナーを処分するための専用のアイテムなどもあります。食用油を処分する凝固剤と同じように、古い塗料やシンナーに加えることで凝固させ普通ゴミとして捨てられるというものです。ただし、こちらもお住まいの地域によっては使用が認められない場合もあるので、その際は、正しい処分方法をお住まいの自治体に問い合わせてみてください。
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