うすめ液の扱い方と、シンナーとの違い

 ペンキなどの塗料を使い塗装作業を行う際、塗料を希釈して伸びを良くし、塗りやすくしてくれるのがうすめ液です。塗料は使用する部位や素材、目的に合わせて使い分けますが粘度が高すぎる場合はハケ跡やローラー跡が残りキレイに仕上がりません。そのため適度にうすめ液で希釈することが欠かせないのです。また、ハケやローラー、バケットの洗浄にもうすめ液は不可欠です。そんなうすめ液について、正しい扱い方や、シンナーとの違い、さらに処分方法など、塗装作業前にぜひ知っておくべきことをご紹介します。

目次
1章:うすめ液とは
2章:うすめ液の種類と違い
3章:うすめ液使用の際の注意点
4章:塗料をうすめ液で希釈する
5章:うすめ液を使ったハケの手入れ方法
6章:使い終わったうすめ液の処分方法

1章:うすめ液とは

 うすめ液はその名の通り、塗料を希釈する(薄める)ための液体です。同じようなものにシンナーがありますが、実はこの2つ、呼び名が違うだけで基本的には同じものと思って間違いありません。
 そもそもシンナーは英語で(paint thinner・ペイントシンナー)と言います。thinが「薄める」という意味で、ペイントシンナーとはそのまま「塗料を薄めるもの」ということ。つまり様々な種類の塗料を薄めるための有機溶剤がシンナーであり、別名うすめ液であるということです。
 うすめ液を塗料に混ぜると、塗料の有機成分などが溶解され塗料が薄まり、塗りやすくなります。市販の塗料やペンキは基本的に適度な粘度に調整されているので、通常はわざわざ希釈する必要はほとんどありませんが、温度や湿度によっては塗料が適切な濃度とならない場合があります。
 そんなときにうすめ液で希釈して、塗料の蒸発量をコントロールすることでキレイな塗装表面に仕上げることが可能となります。
 粘度の高すぎる塗料をそのまま使用すると、表面にハケ跡やローラー跡が残ってしまうことがあり、仕上がりが悪くなってしまいます。そのため希釈が必要なのです。
 ただし、希釈は慎重に行わなければなりません。適切な割合で希釈をしないと、塗料が薄まりすぎ、塗ったそばからたれたり、塗膜が薄くなり下地の色が透けてしまうこともあります。少しずつ混ぜ、繰り返し試し塗りなどをして薄めすぎていないか確認しながら進めていくことが大切です。
 そもそも、通常市販されている塗料のほとんどは希釈の必要がありません。まずはそのまま試し塗りをして、特に問題がなければ薄めずに使用しましょう。
 しかし、気温の低下で塗料の粘度が高くなりすぎている場合や、溶剤が揮発して塗料が濃くなっている場合は、前述した通り、少しずつうすめ液で希釈して使用します。
 うすめ液は塗料の希釈だけでなく塗料がついたハケなどの洗浄や、はみ出してしまった塗料を落とす際にも使われます。ただし塗料の種類によってうすめ液にもいくつかの種類があります。例えば一般的な油性塗料用と、ラッカー系塗料用では使い分けが必要です。さらにうすめ液には人体に悪影響を与えるベンゼンやトルエンなどが含まれています。そのためその扱いにも慎重さが求められます。

2章:うすめ液の種類と違い

 ホームセンターなどの塗料売り場にいくと、塗料と一緒に必ずうすめ液が売られています。うすめ液は、大きく分けると、油性塗料用のペイントうすめ液と、ラッカー塗料用のラッカーうすめ液に分かれます。水性塗料の場合は、水で希釈できるので希釈にはうすめ液を使用しません。
 油性塗料用のペイントうすめ液とラッカーうすめ液は塗料を希釈するという意味では同じなのですが、その成分や濃度に違いがあります。まず、家庭用の油性ペンキなど油性の塗料の希釈に使用するのがペイントうすめ液です。その主成分が脂肪族炭化水素などで、いわゆるシンナー臭ではなく灯油のような臭いがします。
 一方、ラッカー塗料の希釈に使用するのが、ラッカーうすめ液です。こちらの主成分は芳香族炭酸水素やアルコールなどで、ラッカー系の塗料を薄めるために使用するものです。ラッカーうすめ液は、油性塗料用のペイントうすめ液よりも溶解力が強く、乾燥が速いという特徴があり、特有の臭気、いわゆるシンナー臭があります。
 双方ともうすめ液と呼ばれていますが、成分には違いがあるので使用する際には、必ず塗料に合ったものを使わなくてはなりません。
 なぜなら、ラッカー塗料を塗料用のペイントうすめ液で希釈しようとしても、溶解力が足りないためうまく溶かすことができないからです。間違って入れてしまうと塗料がゲル状の固まりになって使用できなくなってしまいます。
 逆に油性の塗料をラッカーうすめ液で希釈すると、見た目には変化はあまりありませんが、塗装した際に塗装面の素材や古い塗膜を侵してしまうこともあります。このように正しい組み合わせで使用しないと、塗料をダメにしてしまうことがあるのです。それぞれに合ったうすめ液を使用し希釈するようにしてください。
 また、ウレタン樹脂塗料や、エポキシ樹脂塗料、アクリル樹脂塗料など合成樹脂塗料には、それぞれの塗料に適した専用のうすめ液があります。使用されている樹脂に適したシンナーを使わないと、塗りにくくなってしまったり、塗料が分離して、固まってしまったりすることがあるのでこちらも注意してください。
ラッカー塗料用の
ラッカーうすめ液
油性塗料用の
ペイントうすめ液
油性塗料用の、テレピン油の入った高級うすめ液
性塗料用の、
テレピン油の入った高級うすめ液
漆塗料用のうすめ液
漆塗料用のうすめ液
ラッカー塗料用の
ラッカーシンナー

3章:うすめ液使用の際の注意点

 うすめ液には化学物質である有機溶剤が使用されています。その配合成分の中には、トルエンや、酢酸エステル類、アルコール類などの混合溶剤が用いられることもあります。
 これら有機溶剤の成分が気化したものを吸い込んでしまうと中枢神経麻痺作用によって麻酔薬を吸入しているのと似たような症状を起こすことがあります。さらに大量に吸い込めば軽い頭痛やめまいなどの中毒症状を起こしてしまうことも。人体に悪影響を与えるので、うすめ液の使用時には、塗装用の防毒マスクを着用するなど、十分に注意してください。
 さらに、吸い込む危険だけでなく、皮膚などに直接触れるとそこから体内に入ってしまうこともあります。中毒の危険のほか、皮膚に炎症を起こすこともあるので素手では扱わず必ずポリエチレン手袋をするようにしてください。
 また、うすめ液のシンナー臭は、多くの人に不快感を与えます。必ず換気の良い屋外で作業するようにしましょう。
 加えて、有機溶剤は可燃性があるため、火気にも気をつけなくてはいけません。最悪、火災や爆発などの事故につながる恐れもあるので不用意に扱わないように気をつけましょう。希釈中や塗装作業の際は、火気厳禁にしてください。
有機溶剤を吸い込まないようにうすめ液を使用する場合は防毒マスクを使用しましょう。
皮膚に直接うすめ液が触れると炎症などを起こすことがあるのでうすめ液を扱う際は塗装作業用のポリエチレン手袋の装着をしてください。

4章:塗料をうすめ液で希釈する

 塗料をうすめ液で希釈する場合は、その塗料に合ったうすめ液を用意するのに加えて、気温などにも注意しなくてはいけません。通常、塗料の希釈の割合(希釈率)は、5~10%ほどの幅をもって設定されていますが、夏場など気温が高い場合、塗料は一般的に粘度が低くサラサラとしていますので希釈の割合は少なめにします。
 逆に気温の低くなる冬場は塗料の粘度が高くドロッとした状態になっています。そのため、高温時よりも少し薄めに希釈しないと、塗料の伸びが悪くなり塗りにくくなってしまう場合があります。気温の違いに合わせて、粘度を適切に調整しましょう。
①塗料にうすめ液を入れる
塗料の容器から一旦別の容器に塗料を取り分けます。例えば、1kg(1000cc)の塗料に対して、1/4カップ(50cc)のうすめ液入れると5%の希釈となります。

②攪拌する
双方を容器に入れたら攪拌棒を使いよく混ぜてください。しっかりと攪拌しないと塗料の色の元である有機成分や樹脂が溶けません。

③試し塗りをする
しっかり混ざったら、必要な分だけバケツやローラーバケットなど別の容器に取り、塗装前に試し塗りをしてみましょう。しっかりと塗料が伸び、隠ぺい性にも問題がなければ塗装を開始します。
 塗料の中には希釈してはいけないものがあるので注意してください。すでに粘度調整ができていて、希釈をせずに使用することが前提の塗料もあるので、商品の注意書きなどをよく確認してみてください。注意書きなどに「無希釈」や「希釈せずにお使いください。」と表記されているものは、基本的には希釈せずに使用してください。

5章:うすめ液を使ったハケの手入れ方法

 油性塗料を使った塗装作業が終了した後、使い終えたハケやバケツなどは洗浄しなくてはいけません。この洗浄の際にもうすめ液が活躍してくれます。うすめ液を使用したハケの洗浄方法は以下になります。

●ハケの洗浄方法

 まずはヘラなどでハケをよくしごき、塗料を絞り取ります。できるだけ塗料を取ってから、塗料がつかなくなるまで新聞紙などにこすりつけます。
 ある程度ハケがキレイになったら、ビニール手袋をしてから、容器にハケが浸かるほどのペイントうすめ液を入れ、ハケを浸し、ゴシゴシと洗います。
 ある程度洗えたら、塗料とうすめ液を吸ったハケを新聞紙などにこすりつけて、塗料とうすめ液を吸い取らせます。これは3~4回ほど繰り返しましょう。
 十分キレイになったらウエスなどでハケを拭き、仕上げに食器用の洗剤で洗い、水洗いしたのちに陰干しすれば終了です。
 ハケのお手入れには、ハケ洗い用のうすめ液を使用するのもオススメです。希釈用のように有機成分を溶解する能力は高くありませんが、溶剤に加え界面活性剤が入っているので、より少ない量で効率よく洗浄することができます。
 また乾燥後の毛先のごわつきも抑えられます。使い方は前述したペイントシンナーを使った洗浄と基本的には同様。またローラーバケやコテバケなどの洗浄にも使用可能です。
 油性の塗料ではなく、ラッカー系塗料を使用したハケの洗浄にはラッカーうすめ液を使用しましょう。洗浄方法はペイントうすめ液のときと同じです。ただし、ラッカーうすめ液はペイントうすめ液以上に引火性が高く、燃えやすい物が近くにあると着火することもあるので十分気をつけてください。洗浄は屋外、もしくは換気の良い場所で行いましょう。気化したうすめ液を吸い込まないようにマスクなども忘れないでください。

6章:使い終わったうすめ液の処分方法

 使い終わったうすめ液は、そのまま排水口などに流してはいけません。排水を汚染し、有機溶剤が排水パイプにダメージを与えてしまうこともあります。そのまま流してしまうのではなく、新聞紙や布に染み込ませて普通ゴミとして処分すると良いでしょう。
 二重にしたゴミ袋などにちぎった古新聞やぼろ布などを入れます。そこにうすめ液を染み込ませます。ビニール袋がうすめ液で侵されないように新聞紙やぼろ布は十分に用意してください。うすめ液を染み込ませることができたら、しばらく袋の口を開けた状態にします。そのまま風通しの良い屋外に置き、しっかり乾かして溶剤を揮発させてしまいましょう。
 完全に揮発したらゴミ袋の口を閉じ、そしてそのまま普通ゴミとして処分してください。ただし、地域によってはうすめ液の処分方法が異なる場合があるので、お住まいの自治体に確認してみてください。
 他の処分方法として、油性塗料やうすめ液を処分するための専用のアイテムなどもあります。食用油を処分する凝固剤と同じように、古い塗料やうすめ液に加えると凝固し、そのまま普通ゴミとして捨てられるというものです。ただし、こういったアイテムを使った処分に関しても、地域によっては認められていない場合もあるので、正しい処分方法は自治体に確認するのが確実です。

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