刷毛(はけ)の種類と選び方

 家具や小物のリメイク、壁の塗り替えなど、DIYでの塗装に欠かせないのが、塗装用品。塗料を塗るための道具には、刷毛、ローラー、スプレーなどがありますが、塗装用品にはそれぞれ特徴があり、どれも同じように仕上がるものではありません。塗装用品の選び方次第で塗装の仕上がりが大きく変わってきます。今回は、塗装用品の中でも使用頻度の高い刷毛(はけ)の種類や用途別の選び方、使い方などについて詳しくご紹介します。

目次
1章:刷毛の形
2章:刷毛の材質
3章:刷毛のサイズ
4章:塗料によって刷毛を使い分ける
5章:その他の刷毛
6章:塗装での刷毛の使い方
7章:刷毛のお手入れ方法

1章:刷毛の形

 刷毛は、動物の毛や化繊の糸などを柄と言われる木やプラスチックなどの板に挟み、糸やワイヤーなどで綴じたものです。絵などを描く際に使う筆と似ていますが、違いについては細かく定義されていません。刷毛は幅広のものが一般的なので広い部分を塗る道具、筆は先が細くなっているものが多く絵や字を書く道具と言っても良いでしょう。
 刷毛の形は大きく3つに分類され、筋交い刷毛、平刷毛、寸胴刷毛と呼ばれます。

筋交い刷毛

筋交い刷毛とは、持ち手の柄の部分が斜めになっている刷毛のことです。壁などの塗装時、刷毛と柄に角度がついていることで塗りやすくなっています。この形は日本独自のものです。えんぴつの持ち方と同じで、手先を細かく動かす繊細な作業をすることができます。

平刷毛

平刷毛とは、ベタ刷毛とも言われ、平らな面や広い面を塗るのに適しています。刷毛部分と柄が一直線になっています。

寸胴刷毛

形は平刷毛と同じですが、平刷毛よりも毛の量が多いため塗料の含みが良く、粘度の高い塗料を伸ばして塗るのに適しています。昔は刷毛といえば寸胴刷毛でしたが、最近では、筋交い刷毛やローラーなどが刷毛の主流になっています。

2章:刷毛の材質

 刷毛の毛の部分に使われる材質には、馬やヤギ、豚などの動物の毛(獣毛)と化学繊維(化繊)があり、それぞれに特徴があります。

 毛の材質によって刷毛の価格も変わってきます。動物の希少部位の毛を用いたものは高額なものが多く、化繊など大量生産できるものは比較的安価で販売されています。

獣毛

 獣毛の刷毛は塗料含みが良いのが特徴です。動物の毛には人間の髪の毛と同じうろこ状のキューティクルがあり、表面が凸凹しています。一見まっすぐに見える毛も実際はうねりなどがあり、この凸凹やうねりが塗料含みの良い理由です。

 馬毛は、柔軟性・弾力性に優れているため、一般的な塗装刷毛として広く使われています。耐水性・耐薬品性も優れており、体や尾など部位によって毛の柔らかさや太さに違いがあります。たてがみはコシが強く塗料含みの良い部位、胴体は柔らかくまとまりの良い部位です。尾の毛は太く、塗料用としては不向きのため、接着剤塗布用などの用途に使われます。尾のつけ根の毛は天尾と呼ばれ、最高級とされています。

 豚毛は、硬くコシのある毛質が特徴です。弾力性・柔軟性にも優れています。

 ヤギ毛は、柔らかく馬毛と同様、塗装に広く使われます。塗料含みが良く、刷毛跡も目立ちません。尾の部分はヤンオと呼ばれ、白い刷毛の高級品として使われます。ヤンスと呼ばれるあごの毛はコシが強く、背中の毛はニス用に使われます。

化学繊維(化繊)

 ナイロンやポリエステルなどの化繊は、吸水性が低く、獣毛の刷毛と比べると塗料の含みが劣るのが一般的です。最近では、技術の進歩で化繊に獣毛のようなうねりを持たせたものや、塗料含みを良くした化繊刷毛も開発されています。水性塗料に良く見られる化学変化で硬化する塗料などは、アルカリに弱い獣毛の刷毛は適さないので化学繊維の刷毛を使用します。

3章:刷毛のサイズ

①柄長 ②毛丈 ③幅(号数) ④玉厚
 刷毛のサイズとは、一般的に刷毛幅のことを指します。筋交い刷毛、平刷毛共に号数やミリメートルでの表示が一般的です。号数は、数が大きくなるにつれ刷毛のサイズが大きくなります。1号は1寸なので、おおよそ、号数×3でミリメートルに換算することができます。関東の刷毛と関西の刷毛では換算方法が違うので多少差異がありますが、10号は30mm程度となります。

 刷毛のサイズは、塗る場所や面積、形状などによって選びましょう。幅だけでなく、毛丈や玉厚、柄の長さなどが表示されているものもあります。刷毛は、「大は小を兼ねる」ではありません。大きな刷毛で細かな部分を塗ろうとしたり、逆に小さな刷毛で広い面を塗るのは手数が増えてしまい効率的でないばかりか、仕上がりもきれいではありません。

 ホームセンターなどでは、使用頻度の高い30mm、50mm、70mmの刷毛がセットになっているものもありますので、用途に合わせて使い分けましょう。

4章:塗料によって刷毛を使い分ける

 刷毛の種類には、形状、材質、サイズなどさまざまなものがありますが、刷毛を選ぶ際に最も重要なのが、塗料のタイプです。塗料には、水性塗料と油性塗料があります。使う塗料が水性塗料か油性塗料かで、刷毛を使い分ける必要があります。

水性用

水性塗料を使う場合は、柔らかくてコシがあり、塗料離れの良い化繊の刷毛が良いでしょう。獣毛の刷毛は、アルカリに対する変化が起き刷毛の中で塗料が固まってしまうことがあります。化繊の刷毛が良いのはそのためです。白っぽい毛をしたものが一般的です。

油性用

油性塗料を使う場合は、馬やヤギ毛、化繊などのコシのある刷毛を使います。油性用と表示のあるものは溶剤に対応しているので安心です。塗料の含みや伸びが良く、毛色は黒や茶色などが多く出回っています。

万能刷毛(多目的用)

さまざまなタイプの塗料に使える万能タイプの刷毛もあります。万能刷毛は、オールマイティに使える刷毛です。水性塗料はもちろん、外装や鉄部用など高粘度の油性溶剤系にも対応しています。

刷毛を選ぶときは、柄の部分やパッケージに水性用、油性用、万能と用途が表示されているものを選ぶと間違いないでしょう。

5章:その他の刷毛

ラッカー・ニス用

刷毛目が残りにくいよう、毛先の細いヤギ毛やナイロンなどが使われます。比較的毛の長さが短く、塗料を薄く伸ばせるようになっています。水性塗料か油性塗料かで使い分けます。

目地用刷毛

毛先が細くて幅の小さい刷毛です。平刷毛よりも柄が長くなっています。狭い目地や隅の部分など、普通の刷毛で塗りにくいところを塗るのに重宝します。水性用、油性用で使い分けます。

ラスター(ダスター)刷毛

塗装前の下地処理や、掃除などに使用される刷毛です。硬くてコシがあるので、ウッドデッキなどの塗装にも使用できます。

隅切り・ダメ込み刷毛

入り隅やサッシ周り、目地部分など、端や狭い部分の塗装をする際の仕上げ用刷毛です。この刷毛は、先がばらつかず、広がらないことが重要です。比較的小さいサイズのものを隅切り、大きめのサイズの刷毛をダメ込みと呼ぶようです。水性用、油性用で使い分けます。

コテバケ

刷毛部分が平たいスポンジのパットになっているため、塗料の含みも良く、均等に平らに塗ることができます。刷毛目跡が残らないため、初心者でも簡単にきれいに仕上げることができます。柄の部分とパットの部分が外れるようになっているので、塗装後の手入れも簡単です。パットに長い柄をつければ、高いところの塗装も可能です。

トタン用刷毛

トタンの塗装に適した幅広の平刷毛です。

サビ止め用刷毛

鉄骨用刷毛
鉄骨などの金属塗装用刷毛です。

刷毛
酸やアルカリなどに抵抗力を持った刷毛です。

のり刷毛
襖や障子の張替えなど、裏打ちで糊をひくときに使う刷毛です。

撫で刷毛
襖や障子など、紙や布を平面に貼りつける作業の仕上げに使うブラシ状の刷毛です。

6章:塗装での刷毛の使い方

 新しい刷毛を使い始めるときは、よく揉みほぐして抜け毛を取り除いておきます。
 柄を両手で挟んでくるくる回したり、紙やすりなどのざらざらした面の上で刷毛を撫でつけるようにすると、抜け毛が取れやすくなります。塗装面に抜け毛がつかないように、しっかりと処理しておきましょう。
 刷毛は、えんぴつを持つように人差し指と親指に挟んで持ちます。大きな刷毛などは握るように持っても良いでしょう。力が入り過ぎないように握りましょう。
 塗料を容器に移し、塗料を刷毛の3分の2くらいまでつけます。根元まで塗料をつけてしまうと、垂れたりムラになったりします。塗料が垂れないように容器の縁で軽くしごきます。バケットと言われる塗料容器に移して使う場合は、付属のネットで刷毛をしごいてから使いましょう。
バケット
 いよいよ塗装していきます。誤って汚してしまったり、はみ出したりするのを防ぐため、養生シートやマスキングテープなどで養生しておきましょう。最初は塗りにくいところや裏面から塗ります。

 刷毛にたくさん塗料が含まれている状態で塗装面の端から塗り始めてしまうと、端に塗料溜まりができてしまいます。

 端から少し内側に入ったところから塗り始め、左右または上下に伸ばすように刷毛を動かします。隅や角は刷毛を縦にして、広い面は刷毛を横にして塗ると効率よく塗れます。刷毛は自由に動かすのではなく、一定方向に動かすとムラなくきれいに塗れます。高さのあるものを塗るときは上から下へ、奥行きのあるものを塗るときは奥から手前へ塗っていきます。

7章:刷毛のお手入れ方法

 刷毛は、使った後しっかりお手入れしておくことで、長く使うことができます。
 

 塗装が終わったら、刷毛に残った塗料を容器の縁などでしごいて落とし、新聞などで残った塗料を拭き取ります。できるだけ刷毛に塗料が残らないようにしておくと後の作業が楽です。


 洗い方は、水性塗料と油性塗料で違うので注意しましょう。

 水性塗料は、水かぬるま湯で色が出なくなるまでよく洗います。使用済みのプラスチック製のパックやコップなどを利用すると、水を無駄にすることがありません。刷毛を押しつけて洗うと毛先が割れてしまうので、毛の部分を優しく手で揉むようにして洗いましょう。すぐに洗えない場合は、毛の部分を水に浸けておくと塗料が固まらずきれいに落とすことができます。塗料が落ちにくい場合は、少量のキッチン用中性洗剤をつけて洗います。翌日など少し時間が経ってからまた使う場合は、毛の部分をラップや使用済みのビニール手袋に巻いて乾かないようにしたり、水に浸けておくと次にすぐに使えます。水に浸けたときは、そのまま使うと塗料が薄まってしまうので、水分を取ってから使いましょう。

 油性塗料は、少量のペイント薄め液や刷毛洗い液などの専用溶剤で下洗いします。専用溶剤は引火性があるので火気厳禁です。シンナー臭もあるので、屋外や換気の良いところで作業するようにしましょう。刷毛に残った塗料がほぼほぼ取れたら、キッチン用中性洗剤で優しく洗います。油性塗料を頻繁に使う職人さんは、溶剤で洗った後、専用の保管箱に油に入れて保管することもあるようです。

 洗った刷毛は、刷毛先を上にしてビンなどに立てて陰干しします。刷毛先を下にして吊るして乾かすと、刷毛に残った塗料が下がってきて刷毛先に溜まり固まってしまいます。

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