扉の開きを防止するラッチの種類と
ドアノブラッチの交換方法

 ラッチという金具をご存知でしょうか。開き戸の扉を閉めた状態で固定しておくためのもので、物置や木戸の扉などによく使われています。名称に聞き覚えがなくとも、見かけたことはあるのではないでしょうか。実はこのラッチ、棚の扉に取りつければ防災や小さいお子さんのいたずら防止、門扉や木製の窓枠に取り付ければ補助錠として防犯の効果があり、知っていると役立つ場面がたくさんあります。では、さまざまある種類をどう使い分ければ良いのでしょうか。それぞれの特徴を解説しますので、利用する際の参考になさってください。

目次
1.そもそもラッチとは?
2.主なラッチの種類
3.ドアノブ(ドア錠)のラッチの役割と仕組み
4.故障したラッチボルトの交換
5.まとめ

1.そもそもラッチとは?

 開き戸の扉を閉めた状態にしておくためには、風などで開いてしまわないようにするための留め具が必要です。左右の扉、もしくは扉と枠の両方に跨るように丈夫な部品を通すことで、扉が開かないようにする留め具が、ラッチと呼ばれる金具です。棒状の部品をスライドさせて通す閂(かんぬき)状のタイプや、板状の部品を回転させて掛けるタイプ、フックを反対側の受け金具に引っ掛けるタイプなどがあります。

 日常よく目にするものでは、室内ドアについている開き止めの部品も、同じ役割を果たすためにラッチという名称がついています。ドアノブのラッチは正式には『ラッチボルト』といい、ドアの側面からちょこんと飛び出している先端が三角形の部品です。飛び出した状態で開き留めをし、ドアノブを回して引っ込めることで解錠しています。

2.主なラッチの種類

【スライドラッチ】

 ボルトをスライドさせて反対側の受け金具に差し込み、扉が開かないように固定するタイプです。働きとしてはまさに閂(かんぬき)と同様。それをぎゅっと小型化したような留め金具です。取っ手部分やボルトの形状の異なる派生タイプが出ており、使い勝手で選べます。
もっともオーソドックスな形のスライドラッチ。両端に取っ手がはまる切り欠きが設けてあり、差し込んだ状態と引き抜いた状態のどちらでもボルトがずれないように固定できます。

公衆トイレの個室の扉に内鍵としてよく使われている『角ラッチ』と呼ばれるタイプです。ステンレス製で四角く太いボルトを採用して強度が高くなっています。取っ手も大きく、掴みやすく作られています。

P型のリング状になっている取っ手部分が特徴的な『Pラッチ』。取っ手が大きいので掴みやすく、ボルトの操作をラクに行えます。

U字型の取っ手を掛けた上に南京錠を取りつけられるタイプです。防犯性を高くしたい門扉や物置の扉などに、後づけの錠として使用できます。

【プッシュラッチ】

 ボルトを押し込むだけでロックが掛かって施錠。ボタンを押すだけでバネの力でボルトが戻って解錠。ワンタッチで簡単に操作できるラッチです。

【打掛】

 バーを回転させて反対側の受け金具に収めるタイプです。受け金具についているネジを締めつけるとバーを固定でき、ズレやガタつきを抑えることができます。

【丸落し】

 金具本体についているボルトが上下にスライドし、床や枠に埋め込んだ受け金具の穴に入って固定するタイプです。両開きの門扉、親子ドアの子扉を固定するために、扉の下または上下に取りつける使い方が一般的です。
 

【パドボルト】

 小屋やフェンスの扉の開き防止にぴったりの、大きく頑丈なウエスタンスタイルのラッチです。取っ手は手袋をしたままでも掴みやすい大型のものです。

【あおり止め】

 フックを反対側につけたリングに引っ掛けるタイプのシンプルな留め具。箱や棚の小扉に使う小さいサイズから、小屋扉に使える大きいサイズのものまで用意されています。

3.ドアノブ(ドア錠)のラッチの役割と仕組み

 ドアノブのラッチボルトは室内ドアが勝手に開いたりしないように仮閉めをするための留め具で、ドアノブを回転することでボルトを出し入れして簡単に扉を開閉できるようにしています。

 通常、ラッチボルトはスプリングの力で、三角形の先端が常にドアノブ脇から突き出るようになっています。ドアを閉めるときは、ドア枠側の金具に当たってラッチボルトが押し戻され、完全に閉まると再び突き出たラッチボルトが受け座に収まって、ドアが仮閉めされた状態になる仕組みです。

 ラッチボルトは長年使用していると、スプリングの力が弱くなるなどして受座から外れやすくなることがあります。ドアが不意に開くようになったり、ドアノブの動きに対して反応が鈍くなったりするなど不具合に気づいたら、ラッチボルトを交換して修理しましょう。

4.故障したラッチボルトの交換

ドアノブの回転に連動してスムーズに動かないなど、ラッチボルトが故障した場合は、次にあげるポイントに注意してラッチボルトを交換してください。

■交換用ラッチボルトを用意するときのポイント

 ラッチを修理する際は、現在使用しているものと各部のサイズが同じラッチボルトに交換しなければなりません。下記の部分をチェックして適合するラッチボルトを用意しましょう。


(1)メーカー名

 適合品を探しやすいようにラッチボルトのメーカーを確認しましょう。大抵の商品はプレートにメーカー名が刻印されています。


(2)品番

 品番はラッチボルトの本体に刻印されている場合がほとんどです。ラッチボルトをドアから取り外して確認してください。


(3)バックセット

 ドアノブの中心からドアパネルの端までの距離がバックセットです。修理するドアにメジャーや定規を当てて測ってください。バックセットは51~60mm程度が一般的です。


(4)フロントのサイズと形状

 ラッチボルトを固定している縦長の金属製プレートがフロントです。このプレート部分の幅と長さを測ってください。プレートの角部分の形状が、「角丸型」(角が丸い)か「角型」(角が直角)かもメモしておきましょう。


 ホームセンターなどで購入する場合は各メーカーに対応した汎用品が適合することがあるので、外したラッチボルトも一緒に持って行くとより確実です。また、上記のデータをもとにメーカーや建材販売店のオンラインショップで購入することもできます。古いもので廃盤になっていても互換部品が出ている可能性があるので、検索で見つけられなくても諦めずに問い合わせてみましょう。

■ラッチボルトの交換手順

 室内ドアのドアノブには、レバーハンドル、円筒錠、チューブラー錠などの種類があり、それぞれにラッチボルトの取り外し方が異なります。ここでは家庭用として普及しているレバーハンドルを例に、交換手順を解説します。


(1)部屋側のレバーハンドルを外す

 まず部屋側のレバーハンドルを外します。ハンドルがプラスネジで固定されているものは、ドライバーでネジを緩めて取り外しましょう。ネジがないものはハンドルの付け根部分(横や下)にある穴にマイナスドライバーの先端を差し込み、軽く押さえてツメの引っかかりを外しながらハンドルを引っ張って外してください。次に反対側のハンドルを引き抜いて外しましょう。


(2)ラッチボルトを外す

 ドア側面のラッチフロントを固定している2本のネジをプラスドライバーで緩めて外し、フロント部分を掴んでラッチボルトを引き抜きます。ラッチボルトがきつくて抜きにくい場合は、ハンドルを外した穴にドライバーの軸を差し込み、ラッチボルトをフロント側に押し出して抜きましょう。


(4)新しいラッチボルトを取りつける

 先端の向きに注意して新しいラッチを取りつけます。先端の斜めになっている方が閉める方に向くように取りつけましょう。向きを間違えるとドアが閉まらなくなります。押さえのプレートをネジで取りつけてラッチボルトを固定します。


(5)反対の手順で元に戻す

 角芯のついたハンドルを外側からレバーを水平にして差し込み、反対側に部屋側のハンドルを取りつけます。ハンドルとラッチボルトが正常に連動していることを確認しましょう。ネジ固定のタイプは最後にネジを締めつけて作業は完了です。

まとめ

 開き戸の留め具にこれほど種類があることに驚いたのではないでしょうか。実際、予備知識なしにホームセンターの金具売り場に行くと、どれを選べばよいのか戸惑うと思います。事前に少しずつ異なる特徴がわかっていれば、あとは材質やサイズを決めるだけ。用途に合わせてラッチを賢く使いわけてください。

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