左官鏝の種類と使い方

 DIYで左官を楽しむ人が増えています。左官とは、建物の壁や床を漆喰やモルタルなどで仕上げる作業のことです。最近では、ホームセンターやDIYショップなどで、手軽に体験できる左官材を扱っているところも多くなり、漆喰や珪藻土などといった自然素材で壁を塗ったり、流行のインダストリアルなインテリアにモルタルを取り入れたりなど、左官が身近なものとなってきました。DIYでの左官は難しさもありますが、完成したときの喜びと充実感は何物にも代えがたいものになるでしょう。今回は、DIYで左官をする際に必要不可欠な道具、左官鏝について詳しくご紹介します。

目次
1章:左官鏝とは
2章:左官鏝の各部名称
3章:左官鏝の種類
4章:左官鏝の選び方
5章:左官鏝の基本的な使い方

1章:左官鏝とは

 漆喰や珪藻土、モルタルなどの材料を壁や床に塗るための道具を左官鏝と言います。左官鏝は平たい鋼の板に持ち手がついたもので、作業の用途によってさまざまな材質、形、大きさがあります。元々は、木材に柄をつけた木鏝がはじまりです。

2章:左官鏝の各部名称

①柄
②背(表)
③首
④腹(裏)
⑤側
⑥先
⑦肩
⑧縁(へり)
⑨尻

3章:左官鏝の種類

 左官鏝の種類は本当にさまざまです。先の尖ったものが一般的ですが、先の丸いものや四角、太さや長さの違いなど、数えればきりがありません。
 鏝の種類は材質、形、仕上げ方の種類などで分けられます。ひとつの鏝ですべての作業をするのではなく、いろいろな鏝を適材適所に使い分けて仕上げます。左官職人は何十本という鏝を、塗りやすさや仕上げ方によって使い分けています。

 材質には、鉄、ステンレス、プラスチック、木、ゴムなどがあります。
 鉄の鏝は、鋼の素材や焼きつけ方によって、硬さや価格などに違いがあります。鋼の種類は主に、SK鋼(炭素工具鋼)、スウェーデン鋼、ハイカーボン鋼、安来鋼(やすきはがね)です。安来鋼は、硬度や成分によって青紙、白紙、黄紙などに分けられており、高級刃物にも使われる鋼です。鋼の種類によって、粘りや堅さなどにも違いがあるといわれています。
 焼きつけ方は左官用語で、硬さの順に、本焼、油焼、半焼、地金となります。本焼は高温で焼入れされた後、焼き戻しをして成型された鏝です。最も硬く、セメントや石膏などに使われます。油焼は高温で焼入れされた後、300度前後のソルト油で焼き戻しをして成型された鏝です。中塗りにも仕上げにも使われる塗りやすい鏝です。半焼は焼入れをしないもの、または本焼きよりも軽く焼入れをしたもの(メーカーや製造元により異なる)、地金は焼入れをしていない鏝です。半焼、地金は、焼入れが甘いため滑りにくく、モルタルの中塗りなどに使われます。
 本焼よりも硬いのがステンレスです。ステンレス製は、硬くて平滑なので、モルタルなどの塗りつけには滑ってしまい向いていませんが、仕上げに使うとキメ細やかな表面を作ることができます。錆びにくく扱いやすいのが特長です。
 プラスチックは柔らかく軽いので、DIY初心者向けです。表面はつるっとしているので、仕上がりもきれいです。
 木鏝は、ならした表面が平らではなくざらざらになるため、金鏝仕上げの下塗りなどに使われます。
 ゴム鏝はタイルを張りつけた後の目地埋めの際に使用する柔らかい鏝です。

 左官鏝の形は、数え切れないほどたくさんあります。ここでは左官鏝の一般的な形についてご紹介します。

■仕上鏝・中塗鏝

鉄、ステンレス、プラスチック製の先の尖ったものが一般的で、漆喰や珪藻土、モルタル壁塗りで使用します。中塗鏝は仕上鏝と同じ形ですが、中塗り~粗仕上げ用です。

■角鏝

重さがあり、主に押さえ仕上げのときに使われる鏝です。

■レンガ鏝

レンガやブロックを積む作業に使われます。桃型が一般的です。

■ブロック鏝

ブロックを積む作業に使う鏝です。細長い三角の形は、ブロックの穴にモルタルを流し入れるのに適しています。

■面引鏝

内角面引き鏝

出隅を仕上げるときに使います。角度のついた山にアールのついているものは内丸面引き、直角が出ているものは内角面引きと言います。

切付面引き鏝

入り隅を仕上げるときに使います。角度のついた山にアールがついているものは外丸面引き、アールがついていなく直角がでているものは切付面引きと言います。

■くし目鏝

タイル施工時の接着剤やモルタルつけに使用します。くしの細かいものは、珪藻土などの模様つけにも使われます。

■目地鏝

タイルやレンガ、ブロック施工時の目地仕上げに使います。目地の太さに合わせてサイズを選びます。

■ゴム鏝

タイルの目地埋めなど、傷がつきやすい素材のときに使用します。

■土間鏝

その名の通り土間を仕上げる作業で使います。コンクリートを平らにならすため、強硬で厚みもあります。

■柳刃鏝

細かい作業や、手の届きにくいところの作業に使用します。鏝首が鏝の根元についているので、狭い場所に鏝先を運ぶことができます。

■鶴首鏝

柳刃鏝同様、狭いところで使用する鏝です。鏝首が鶴の首のような形をしていることでこの名がついたと言われています。

4章:左官鏝の選び方

 DIYで壁に漆喰を塗りたい、キッチンにタイルを張ってみたい、レンガの花壇を作りたいなど、左官作業をするときは目的に合った材料と道具を揃える必要があります。左官鏝を選ぶ際は、3章の左官鏝の種類を参考にしてください。
 左官鏝を購入する際、インターネット通販などを利用することもあるかと思いますが、左官鏝は材質によって重さも硬さも違うので、最初は実際に手に取って選ぶと良いでしょう。特に重さは重要です。壁塗りなどは長時間作業することも多くなります。作業中は鏝の重さに塗り壁材の重さも加わり、慣れない作業で疲れてしまうこともあります。ホームセンターなどに足を運んで実際に手に取ってみると、鉄製とプラスチック製では、重さに違いがあることがわかると思います。最初は軽くて手入れのしやすいものを選ぶ方が良いでしょう。仕上鏝、レンガ鏝、目地鏝などがセットになった初心者用もあります。ステンレスやプラスチック製の鏝は軽くて錆びにくいのでオススメです。壁塗りに慣れてきたら、多少重さのある鏝や専用の鏝を使ってきれいに仕上げることを目指しましょう。壁材を押しつけて滑らせるときなど、多少重さのある方が鏝が浮かずにきれいに仕上がります。
 
 漆喰や珪藻土などで壁塗りをするときは、仕上鏝が必要です。大きすぎず小さすぎない180mm程度のものが使いやすいでしょう。部屋の角(出隅、入り隅)をきれいに塗るために、面引き鏝があると便利です。
 タイルを張るときに使うのは、くし目鏝とゴム鏝です。広い範囲に接着剤を塗るときは、くし目鏝を使うと作業効率が良いです。ゴム鏝は、目地材を埋め込むときに使います。狭い範囲であればゴムベラなどで代用できますが、壁面などの広い作業をするときは、ゴム鏝があると便利です。
 レンガやブロックを積むときは、ならす作業ではなく盛る作業になります。鏝幅の広いレンガ鏝を使うと、一度にたくさんの材料をすくうことができるので作業がはかどります。はみ出した目地部分を整えるのに、目地鏝を使いましょう。鏝幅が細くまっすぐなので、他の鏝では代用できません。目地鏝をうまく使えば、仕上がりが格段に良くなります。
 モルタルで床を仕上げる場合は、下塗り、中塗り、仕上げと塗り重ねます。木鏝や中塗り用の鏝を使って下地を塗り、最後に仕上げ用の鏝を使って仕上げます。土間鏝はコンクリートの基礎を作るときに使用します。コンクリートを塗った後、土間鏝を使って押しつけることで、コンクリートの中の骨粉を沈め、表面を滑らかにします。

 このように鏝を使う作業はいろいろありますが、すべて同じ鏝を使うと作業効率や仕上がりが悪くなることがあります。鏝はどれでも同じ、と使い回しせず、用途に合った鏝を選んで使いましょう。

5章:左官鏝の基本的な使い方

 漆喰や珪藻土などで壁を塗るときは、左官鏝の他にコテ板を用意します。下準備として、壁にシーラーや下地材などを塗り、吸い込みを防止しておきます。マスキングテープや新聞紙などで養生もしておきましょう。
左官鏝を利き手に持ち、反対の手でコテ板を持ちます。コテ板に材料を乗せ、鏝の縁で材料を切るようにしたら、コテ板を立て、鏝を持っている方の手首をひねって鏝の腹を上向きにするようにして、鏝に材料を乗せます。
 材料の乗った縁の方を壁に押し当てて、少しずつ鏝を寝かせながら下から上へ鏝を滑らせていきます。1列塗ったら隣の列に移動します。右利きの場合は左から塗り始めて右に進み、左利きの場合は右から塗り始めて左に進みます。5列くらい塗ったら、今度は横にならしていきます。鏝には材料を乗せず、進行方向の鏝の縁を少し壁から浮かせて滑らせます。浮かせすぎると塗った材料を削いでしまうので注意しましょう。1回目は下塗りなので、壁が多少見えてしまっても構いません。
 下塗りが乾いたら、仕上げをします。同じ要領で塗り残しがないように塗っていきましょう。薄く塗りすぎると乾いたときに下地が透けてしまいますが、厚く塗りすぎるとひび割れなどの原因になります。1.5~2mmくらいの厚みになるように仕上げましょう。
 鏝の使い方でいろいろな模様をつけることもできます。まっすぐ均一な力で鏝を滑らせれば、鏝跡の残らないフラット面になりますが、これには熟練の技が必要です。DIYの塗り壁なら、上下左右好きなように鏝を動かして塗り跡を残した「ラフ仕上げ」や「鏝波」がオススメです。鏝を一点から円を描くように動かして作った模様が「扇仕上げ」です。鏝を横に持ち、鏝尻を横に引っ張るようにして横の模様をつけたのが「引きずり」です。引きずりは和室などに良く合う模様です。くし目鏝を使って、縦や横に模様をつけたものは、くし引きと言います。その他コテ刷毛やローラー、手などを使って、いろいろな模様を楽しむことができます。
 モルタルを床に塗るときも基本的には同じ動作ですが、塗るときは、部屋やスペースの奥から横方面に塗り広げていき、出入り口に向かって後ずさりする感じで塗っていきます。出入り口から塗っていってしまうと最後に身動きが取れなくなってしまいますので、注意しましょう。モルタル仕上げをする場合は、表面の水分が引いてきたのを見計らってブラシや刷毛などで表面をならします。人が歩く面を平滑に仕上げると滑りやすくなるためです。壁面や人の通らないところは平面に仕上げても良いのですが、モルタルを凸凹なく平滑に仕上げるのは熟練の技が必要ですので、ムラなどは気にせずラフに仕上げることをオススメします。
 タイルを張る作業では、くし目鏝とゴム鏝を使います。
タイルを張る面に接着剤を均一に塗布します。一定方向にくし目鏝で接着剤に山を作ります。谷になった部分から水分や空気などを逃がすことで、接着剤を均等になじませることができます。
 タイルを張った後、接着剤が乾いてから目地埋めをします。ゴム鏝を使って目地に目地材を押しつけていきます。鏝裏がゴムなので、タイルに傷をつけることなく目地埋めをすることができます。

 レンガやブロックを積むときは、レンガ鏝やブロック鏝を使ってモルタルを乗せ、目地の仕上げには目地鏝を使います。ブロック鏝は三角形をしていて先が細いので、ブロックの穴にモルタルを入れるときに重宝します。モルタルを乗せるときは、シャベルのようにすくって鏝の背に材料を乗せて使います。
レンガを積むときは、モルタルを2列に並べます。
目地鏝は積んだときにはみ出たモルタルをきれいに整えるために使用します。2段目以降を積むときは、横の目地が目地鏝のサイズに合うように調整しましょう。

6章:左官鏝の手入れ

 左官鏝をいつまでもきれいに長持ちさせるためには、使い終わった後の手入れが重要です。作業が終わったら、鏝についた材料を良く洗いましょう。洗わずに放っておくと、鏝に残った材料が固まってしまい、次の作業がしにくくなります。その都度水で洗い、乾いたタオルで水分をよく拭き取りましょう。鉄製の鏝は水分を残しておくと錆びます。サビがつくのを防ぐために、刃物用のオイルを薄く塗っておく方法もあります。オイルを塗った際は、使用する前によく拭き取ってから作業しましょう。

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